第3話「ただの体質」
ふっ、我ながらバカな妄想にとりつかれたものだ。
この俺が『アンデッド系の魔物かもしれない』などと……。
たまたま、俺が回復魔法への耐性がなかっただけのことだろう。
ただの体質の問題で、魔物であるかどうかは無関係。そうに決まってる。
「お? 火が弱くなってきたな。すまねぇがマホケス、景気付けにチョチョっと火力を上げてくれや!」
「分かった。少しだけ火魔法を加えよう。火魔法! フッ!」
ガブアスに頼まれ、俺は加減しながら火の呪文を唱える。
すると風に乗った炎が焚き火を覆い、火力は見るからに上がったようだった。
「ありがとうよマホケス! やっぱり焚き火はこうでなくちゃな! ガッハッハ」
豪快に笑うガブアスだが、俺がつられて笑うようなことはなかった。
なぜなら、そこに俺の“もうひとつの気掛かり”があったからだ。
先ほどの光景を見れば誰にでも分かることだが、どういうわけか……俺の魔法は――――――
【口から出る】。
氷魔法も風魔法も、肉体強化の魔法ですら、もれなく【口から出る】。魔道士の杖なる武器を持ってはいるが、肺で魔法を練る俺にとってはただの杖でしかない。険しい道を歩くときは重宝する。
「何度見てもマホケスの魔法はすごいね。口から魔法を出せるのなんて、この大陸で君だけしかいないんじゃないかな?」
「…………ハハハ、止せよミゲル。ただの体質だって」
人里離れた森の奥に住んでいた俺に、それがおかしいことだと教えてくれる人間はいなかった。義理の両親も、魔法のことなどよく知らなかったのだろう。
旅の途中で魔法学校なる場所に寄ったことがあるが、そこにも口から魔法を吐く者はひとりもいなかった。俺が魔法を披露したときの、学生たちの怪訝そうな顔が忘れられない。
魔物たちの吐く冷気のブレスや、火のブレス。
なぜだか俺の魔法はそれらにそっくりなのだが、もちろん理由は分からない。
「景気付けも良いけど、魔王との激戦が控えているんだ。魔力は温存するようにね?」
「ハハハ、分かってるって!」
嗜めるように言うミゲルに、俺は笑顔で応える。
しかし内心では笑ってはいなかった。だって“魔力”なんて概念、俺には無いのだから。
そう――――――
奇妙なことに俺の魔法は、魔力とやらを消費しないようなのだ。……………………息だからか?
『もしかしたら俺は、爬虫類系の魔物なのかもしれない…………』




