第2話「癒やしとは」
『勇者パーティの俺は、もしかしたら人型の魔物なのかもしれない……』
もちろん、そんなことを本気で思っちゃいないさ。
些細なことを、意味もなく大きな問題だと捉えているだけだ。魔王との決戦を控え、精神的に余裕が無くなっている杞憂の類だろう。
確かに俺には両親がいないので、生い立ちという意味では謎が多い。
しかし赤ん坊だった俺を森で拾い、大きくなるまで育ててくれた義両親のことを、俺は本当の両親のように思っている。
冒険の旅に出るのも、何度も反対された。
それでも最後には了承し、家を出た俺に手を振ってくれた義両親の、あの不安そうな顔は忘れられない。そんな父と母のためにも、俺は自分が何者だろうと魔王を倒さなければならないのだ!
「マホケス、やっぱり回復魔法をかけておいた方が良いんじゃない? ほらそこ、ひじを擦りむいているわ」
僧侶のリリーナが、心配そうな顔で再び訊いてきた。
パーティの回復役は、心配性なくらいがちょうどよいことを彼女は知っている。
「こけて擦りむいただけだから大丈夫だって。それに魔王城は目の前だ、少しでも魔力は節約しないとな」
「もう! いつも頑固なんだから。本当に辛いときは、ちゃんと言わないとダメだからね?」
「ああ、もちろん。ありがとう」
俺が礼を言うと、リリーナは次にミゲルたちへ同じようなことを訊ねるのだった。
「………………ハァ」
俺は無意識に嘆息する。
リリーナが頑固の前に『いつも』という言葉を足したのは、俺がここ最近、彼女の回復魔法を断っているからに他ならない。
なぜ回復魔法を断るのかって?
理由は簡単。そこに俺の“気掛かり”があるからだ。
最近になって気付いたことなのだが、どうやら俺は――――――
【回復魔法でダメージを受けている】…………らしい。
「ガッハッハ! ありがとよリリーナ! すっかり傷が治ったぜ!!」
「良いのよ。これが私の仕事なんだから」
回復魔法を受けたガブアスが、マッスルポーズで健勝をアピールしている。…………そう、あれが普通だ。回復魔法を受ければ、普通は傷が癒え元気になる。
にも関わらず、俺が彼女の回復魔法を受けると、全身に疲労感が押し寄せるのだ。無論、傷は癒えない。
最初の方は、そういうものかと思っていた。
プラシーボ効果で傷の治りが早くなり、疲労感もその代償のようなものなのかと…………。
だが違う。
『個人差があるのだろう』と仲間たちには嘘をついたが、俺は明らかに回復魔法でダメージを受けている。傷の治りは目に見えて遅くなるし、最悪の場合は広がりさえする。
自分と仲間を誤魔化し誤魔化しここまでやってきたが、もしかしたら俺は――――――
『もしかしたら俺は、アンデッド系の魔物なのかもしれない…………』




