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勇者パーティの俺は、もしかしたら人型の魔物なのかもしれない  作者: 空亡


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第12話「大団円」


「タナトス・ウィンター………………?」


 確かその名は、行方不明になった魔王の息子の名だったはずだ。

 なら、勇者ミゲルは………俺は………?


「ミゲル………ど、どういうことなの?」


 リリーナが狼狽した様子で訊ねる。

 するとミゲルは、ぽつりぽつりと話を始めた。


「僕はいままで………みんなに嘘をついてきた。僕の本当の名はタナトス。父は………そこにいる、魔王デスロードなんだ。そう――――――僕は人間じゃない、魔物なんだよ」


「な、なんだってーー⁉」


 リリーナも、ガブアスも、もちろん俺も。

 デスロードでさえ、顔面を驚きでいっぱいにした。


「ゆ、勇者であるお前が………ワシの息子だと?」


「そうだよ、父さん。三十年前に、僕はこの魔王城から家出したんだ」


「家出⁉」


 誘拐ではなく、自主的に魔王城を去ったと語るミゲル………もといタナトス。

 

「ちょっと待てよミゲル! おめぇさんは確か十七才じゃなかったのか? 三十年前じゃ、計算が合わねぇぜ?」


「僕の本当の年齢は四十五才なんだ」


「四十五⁉」


 魔物のなかには長寿な者も多いと聞くが、まさかミゲルが俺よりも年上だったなんて………。


「じゃあ、このペンダントは?」


「ああ、それはたまたま見つけた人間の捨て子に、僕が握らせた物だよ。もう二度と魔王城には戻らないつもりだったけど、当時の僕は甘さを捨てきれなかったんだろうね。もう一度ペンダントを探し出せるように、その捨て子に【マホケス・ウィンター】と名付け、名を記した紙を置いておいたんだ」


「俺の名付け親、お前かよ⁉」


 衝撃の事実の大安売りだ。

 こいつが俺を仲間に誘った理由は、このペンダントが魔王城の鍵だと知っていたからか。


「で、でもあなたは肌の色も人間と同じだし、角だって生えていないわよ? とても魔物には見えないけど………」


「それはワシから説明しよう」


 さすがに傷の癒えた魔王が、ゆっくりと立ち上がる。

 そしておもむろに、側頭部の両角をもぎ取った。


「これはアクセサリーなのだ」


「え………じゃあ、肌の色は?」


「特殊な染め粉で青く塗っている。本当は肌色だ」


「ええ~~………………………」


 角がなくて肌の色も人間と一緒なら、それただの背が高い人じゃん。

 というツッコミは、心の奥底にしまっておくことにした。


 もうこれ以上、状況を拗らせたくない。


「昔の僕は、どうしても父さんの企業体制が納得いかなかった」


「企業体制⁉」


「幹部から毎日のように聞こえてくる父さんへの愚痴。下級モンスターたちが定期的に起こすスト。当たり前のサービス残業に、理不尽なリストラ………。僕はもう、そんなブラックな体制が見るに堪えなかったんだ!」


 確かに身内のせいで苦しむ社員を見るのは、思春期の心には来るものがあるのかもしれない。しかし聞けば聞くほど、魔王軍の話に聞こえないのはどうしたものか。


「だから家出を?」


「ああ。そして修行を重ね、父に挑めるほどの実力を身につけた。父を倒しすべての因果を絶つ、この日の為に………」


「ブラックな体制に苦しむ魔物を見るに堪えなかったのは理解できたが、もし魔王を倒せばその魔物たちも、お前すら道連れに死んでしまうんだぞ? そこは知らなかったのか?」


「もちろん知っていたさ。だが悪を倒す為なら、どんな犠牲も厭わない。それが僕の信条だったからね」


 うーん………。

 目的の為なら手段を選ばないあたり、似た者親子なのかもしれない。

 途中からミゲルに抱いていた違和感も、魔物だと知ればどこか納得できる部分があった。


「でもミゲル………あなたは魔王を倒さなかったわ。それはどうして?」


 リリーナの質問に、ミゲルと魔王は互いの視線を交差させる。


「………昔の父なら、祝日だからと魔物に休みを与えるようなことはしなかった。必ず自分の周りに強面の魔物を立たせ、魔王城にひとりでいるようなことはなかった」


 ミゲルの瞳がデスロードをまっすぐに捉える。

 しかし魔王は、目を逸らすような真似はしなかった。


「お前がいなくなって数十年、ワシは自分を見つめ直した。人間どもに復讐する為、魔物たちの心をひとつにすることに執心したのだ。おかげで魔物たちは再び我が下に集まり、かつてのような強き魔王軍を取り戻した」


「それは喜ばしいことだよ父さん。でも………」


「うむ、分かっている。人間はなにも悪くなかった。悪いのは勘違いした、ワシの方だったのだ。人間たちには悪いことをした、もう二度と迷惑をかけないと誓う」


「と、父さん………!」


 ふたりは熱く抱擁し、ここに数十年にも及ぶ親子喧嘩は終結する。

 まさかこの旅がこんな形で終わりを迎えるなど、想像もしていなかった。


 しかし、俺の心は晴れ晴れとしている。

 すべての霧が晴れ、青々とした晴天を覗くような気分。


 俺は魔物ではなかった。

 様々な特技も、いまとなっては些末な問題だ。

 そしてなにより、もう理不尽に死ぬことはない。


 つまりこれは――――――――


『俺にとっての、最高のハッピーエンドってやつなのかもしれない。いや、もう“かもしれない”なんて曖昧な表現は止めよう。これは間違いなく、俺だけじゃない………人類にとっての大団円だ!』



もう少しだけ続くんじゃ。

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