第10話「最後の手段」
いや、ただの他人の空似だろう………。
名前が似た人なんて、世界を探せばいくらでもいるのだから。
「ワシからも質問をひとつさせてもらおうか」
「おぅ? なんだ?」
「どうやってあの大扉を開けたのだ? あの扉は、特別な鉱石でしか開かぬはず」
「ああ、それなら――――――――」
ガブアスの視線が俺に向かう。
こうなっては、どうしようもない。
俺は震える手で、ポケットに入れていたペンダントを取り出した。
すると次の瞬間、魔王の両目がカッと開かれる。
「そ、そのペンダントはワシが息子へ贈った物………⁉ なぜ貴様らがそのペンダントを持っているのだ!」
そ~らきた。
絶対そういう流れだと思ったよ。
もう魔王の息子、確定じゃん………。
「やはりワシの息子をさらったのは、貴様ら人間どもか!! 許せぬ………許せぬぞ!!!!」
怒りに任せて立ち上がった魔王デスロードは、全身から魔力を迸らせる。
誤解なのだが、もはや聞いてくれそうにない。
「さあみんな! これが最後の戦いだ!! 行くぞ!」
ミゲルが声を張り上げ、皆が戦闘態勢を取る。
魔王にはまだ、『魔王が死んだとき、魔物はどうなるのか?』という肝心な質問が聞けていないというのに。
「ワシを倒せば、この世の魔物もすべて死滅する! 貴様の言う通り、これが最終決戦なのだ!」
心を読んだかのようなタイミングに感謝はするが、いまの言葉で決定的になってしまった。魔王を倒せば………俺は死ぬ。
もはやこれまで、“最後の手段”を使うときが来たようだ。
「極光聖天斬!!」
「ホーリー・アロー!」
「体当たり!」
仲間たちの畳みかけるような攻撃が、魔王へと向かう。
それに負けじと、俺も魔法を使った。
「カラダ・バキバキ!!」
俺の放った魔法が、魔王へ直撃する。
「ぐわーーはっは! 効かんわぁ!!」
仲間たちの攻撃は、魔王の鋼のような肉体に傷一つ付けることができない。
「くそ! まだまだ!!!!」
「おうともよ!!」
態勢を立て直した仲間たちは、再び猛攻撃を開始する。
「炎王双破神剣!!!!」
「ホーリー・シャワー!!」
「体当たり!!」
すかさず、俺も魔法でアシストする。
「ソクド・モリモリ!!」
俺の魔法が再びデスロードに命中した。
「ぐわーーはっは! そんな攻撃、当たるものか!!」
仲間たちの攻撃は、魔王の軽快なフットワークに翻弄された。
「ま、まだまだぁ!! 殺戮斬滅毒死斬!!!!!!」
「ホーリー・マスカルポーネ!!」
「体当たり!!!」
仲間たちは三度目の正直とばかりに、渾身の攻撃を繰り出す。
もちろん俺も、魔法の手を緩めない。
「リョウテ・ムキムキ!!」
俺の魔法が誰よりも早く、魔王の下へと届く。
すると――――――
「片腹痛いわぁ!!!!」
「うわぁ!?」
デスロードの腕の一振りでミゲルとガブアスは吹き飛び、両者とも壁に叩きつけられた。
「さすが魔王……なんて攻撃力だ……」
俺がそう関心していると、体が傷だらけになったミゲルが俺の前までやってきて言った。
「さすが魔王……じゃないんだよマホケス。さっきから、なんで魔王の方に肉体強化魔法をかけるんだ!!」
チッ……さすがは勇者、俺が魔王を密かにアシストしていたことに気付いていたか。
「攻撃が全然通じないじゃないか!!」
「すまない。口元が狂ったんだ」
仕方ないだろ。
魔王に死んでもらったら困るんだから。
それに【殺戮斬滅毒死斬】ってなんだよ。
勇者の使う技じゃないだろ。斬をふたつも入れるな。
「オレっちだって死ぬかと思ったぜ! まさかわざとじゃねぇだろうなぁ?」
うるさい筋肉ダルマ。
体当たりしか使ってない奴が何を言う。
当てにくいうえに、自分に反動ダメ入るやつだろそれ。
得意の正拳突きはどうした。
「クックック……これまでのようだな。さあて、とどめを刺してやろう!!」
「こうなったら、最後の技だ!!」
ミゲルの持つ聖剣が輝き始める。
いけない……なにかやらかしそうだ。
「今度ばかりは、邪魔させねぇぜ」
くっ…………!
ガブアスが俺の前に仁王立ちしているせいで、魔王のアシストができない。
「マーダー・キリング・デストロイアターック!!!!!!」
やたらと物騒な技名を叫びながら、ミゲルは聖剣を魔王の方へ投げ飛ばす。神々しい光を放つ聖剣は、凄まじい速度で宙を駆けると、そのままデスロードの胸に突き立った。
「ぐううおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!」
耳をつんざく断末魔をあげながら、魔王デスロードは後ろ向けに崩れ落ちた。その姿を遠巻きに眺めていた俺は――――――
『もしかしたら俺は、もうダメなのかもしれない…………』
そう考えるのだった。




