第1話「理想的なパーティ」
「みんな、今日はこの辺で野営にしないか?」
光もほとんど届かない森の奥で、勇者のミゲルが皆に言った。
周囲の暗さで時間は分からないが、日が沈んだのは確かだろう。
「賛成よ。もう足がくたくた……」
そう言って安堵の息を漏らしたのは、僧侶のリリーナだ。
彼女はとある寺院の箱入り娘で、過保護なまでに愛を注がれて育ったため、体力はお世辞にもある方だとは言えない。しかし誰にでも分け隔てなく慈愛の心を持つし、なかなかの博識だ。そして何より、回復の魔法で彼女の右に出る者はいない。
「今日はかなり歩いたからなぁ。ここから先は魔の臭いも濃くなっているし、俺もふたりに賛成だ」
俺が自分の肩を揉みながら松明で周囲を照らすと、森の木々の中に大男がひとり浮かび上がった。
「ガッハッハ! オレっちはまだまだ行けるが、皆が疲れたんじゃしょーがねぇ。テントの設営はまかせな!」
背負っていた大荷物を下ろしながら、大男改め武道家のガブアスが笑う。
筋骨隆々の体はもちろん見せかけなどではなく、ガブアスは手際よく簡易式のテントを組み立てていった。彼は大陸一の大道場の跡取り息子で、武闘大会で何度も優勝している熱血漢だ。
「じゃあ俺は火起こし担当ということで」
「ああ、頼む。ここはもう魔王の領域内だから、あまり遠くへは行かないようにね?」
「分かった」
ミゲルはまだ十七だというのに、勇者としての才能に目覚めた若き天才。
その甘いマスクも然ることながら、強く・優しく・頼りがいもある、俺たちのパーティの絶対的リーダーだ。
「さて、薪はこれだけあれば大丈夫だろう。火魔法!」
そして俺の名は【マホケス・ウィンター】。
魔法が少し得意な、しがない田舎魔法使いだ。
偶然に出会ったミゲルに魔法の才能を買われ、魔王討伐の旅に参加することを決めた。
俺たちパーティは破竹の勢いで魔王軍の砦を攻略し、立て続けに三体もの四天王を倒してきた。目指す魔王城は、この森の先。魔王討伐の旅も、佳境と言っても過言ではないだろう。
「マホケス、怪我はない? やはりここまで来ると、魔物たちも手強いのが多くなってきたわね。回復魔法をかけておきましょうか?」
「ありがとう、気持ちだけいただいておくよ。俺はずっと後衛で、敵の攻撃もろくに受けてないからな」
「そう? でも、あまり無理をしてはダメよ?」
「はは、もちろん!」
リリーナは本当に気立てが良く、その容姿も非の打ち所がない。
ガブアスは気さくで楽しい、パーティのムードメーカー。
ミゲルも戦いでは先陣を切ってくれる、勇敢な男だ。
連携も悪くないし、バランスも良い理想的なパーティだと思う。
このメンバーなら、魔王を倒すことだって夢ではないに違いない。
ただひとつだけ、問題があるとすれば――――――
『もしかしたら俺が、人型の魔物なのかもしれない…………ということだけだ』




