第33話 〜 限界突破?〜
石畳の石壁に囲まれただだ広い空間で2人ね男性がかれこれ2時間程戦いを続けていた。戦いと言っても2人が持っているのは剣の長さに切られた鉄パイプで、片方の男性が先程から一方的に攻撃を当てている状況だった。
「おらぁー、ひよっこぉっ!もっと気合い入れないと死ぬぞぉ!」
千里也が魔力を纏わせた鉄パイプを防戦一方の勇に向けて振り下ろした。その言葉を聞いて咄嗟に纏わせる魔力量を上げて両手の力を込めて千里也の一撃を受け止める。
グガァアン
勇が纏わせた魔力量が多かったのか、千里也の鉄パイプが少し反発するように跳ねた。その隙を勇は逃さず体を一回転させて横なぎの一撃を千里也に放った。
しかし、勇の一撃はブンと音を立てて空振りをし隙だらけの背中を晒してしまった。その瞬間、千里也の前蹴りが勇の背中を捉え勇は派手にベッドに飛び込むかのように吹き飛んだ。
「お前は馬鹿かっ!そんな戦い方をしているからいつまでもいよっこなんだよ。なんであの体制から横なぎにする!そのまま最小の動きで突きに持っていけばたとえ避けられてもまだ、対応できただろうがぁ!」
うつ伏せのまま大の字に寝転んでいる勇に唾を沢山飛ばしながら激を飛ばした。勇の体が淡く光った後、のっそりと剣を杖代わりに起き上がる。
「…なんでスキルも使わずに…もうこれで魔力も底を着きました…」
「良し!このまま牛頭鬼を倒(殺)して来い。いい加減突破してくれねぇと俺達がジジイにどやされる。1階層で待っているからなぁ」
そう言い残して千里也は鉄パイプを一振りして壁際に残していた最後のモンスターを倒して訓練用の大部屋から出て行った。ここは第4階層のモンスターハウスだ、体育館くらいの大きさの部屋で、皇安局第3課が訓練時に使用する場所だった。
ここ2日程、千里也と裕が順番に勇とモンスターハウスに来て最後の一匹だけを残して掃討し訓練場に使っていた。このモンスターハウスは一度入ると中にいるモンスターを全滅させない限り扉が開くことがなく、外からの遭遇モンスターが入ってこないので度々、この様に使用されていた。
「全く…なんて訓練だ…これで死んだらどうするんだっての…」
魔力も体力も生命力も一桁台で牛頭鬼の一撃を受けたら死亡してもおかしくない状態だった。身体強化も回復も使えない状態で、スキルも使わずに一撃で牛頭鬼を倒すとまれに限界突破に至るらしい。
初めて聞いた時は何て眉唾な方法なんだと文句を言いそうになったが、千里也も裕、そして里見すらその方法で限界突破したと言われては引き下がるしかなかった。
因みにこの2日間で牛頭鬼との対戦は100戦をゆうに超え、一撃で倒せた事は68回を数えていた。昨日50回を超えても限界突破しなかった際にたまらず、千里也が限界突破した時の回数を尋ねると「15回くらいだったか?」と返ってきて崩れ落ちた。
しかし、一度挑戦を初めてしまったので途中で辞めさせてくれるはずもなく、文字通り歯を食いしばって続けていた。
5階層に降りるまで無駄な体力を消費しない様に途中でモンスターに遭遇しない様に警戒しつつ移動し無事に階5階層へ降りるかいだんまでたどり着いた。
「あ〜、武器くらい普通の剣にしてほしいよな。幾ら魔力を纏わせるって言っても、元が鉄パイプじゃ高が知れているし…。
一撃だとどうしても頭部への攻撃だけになって隙も大きいしな…」
流石に同じ相手と100回も戦闘をしているとそれなりのパターンがわかってくる。しかし一撃で倒すほどの攻撃を頭部に行うためにはその動作を引き出さなければならないが、ここ数回そこ迄に体力が尽きそうになる事があった。
仕方がなく、一撃での討伐を諦め下段への攻撃を行い、生命優先で倒していたのだった。
『どうか、体力が持ちますように!』
祈りを込めて階層主の扉を開けるとそこにはいつもとは異なる姿の牛頭鬼が立っていた。
お読みいただきありがとうございます。
今作品は全て作者の妄想で出来ております。
現実の言葉、人物、団体、組織などなどは、一切関係がございません。ご了承の上お読み頂けますと幸いです




