第31話 〜 昼休み? 〜
図書室を後にした勇と圭介は2人だけのエスケープスペースに昼食を持って移動した。
そこは校庭の端にあるプールの裏で3方が壁に囲まれたボイラー室の裏手なので誰も来ない。昔は少し尖った生徒達が隠れて煙を吐き出す溜まり場になっていた場所だ。
しかし8年前に当時、尖った生徒達に揶揄われていた生徒が命を終わらせた場所でそれ以降、生徒達が近寄らなくなった場所だった。
そんな場所なので入学当初からボッチだった勇は他に干渉されないと考え昼食を此処で撮り始めたのだった。勇に取っては幽霊などより生きた人間の方が余程怖く感じたからだった。
同じ様に圭介も静かに食事をする場所として此処をよく利用していて1年間は互いに話す事もなく別々に昼食を食べていたが、2年の時に同じクラスになり席も前後になったタイミングでどちらとも無く話しかけてから今の様な関係になった。
「はぁー、ここで勇と昼食を食べるのも今月で最後か…同じ大学に進学すると思っていたんだが…親父さんが…」
「まあな、親父の事もだけど…進学して何を学ぶのか疑問におもっちゃってな…」
「仕方がないさ、それもお前の人生だし。それにしても高卒で国家警備局ってどんな裏技だよ?」
「すまん、話せない…」
「あー、つまんねぇ…俺も国家警備局目指そうかな?そうすれば勇と仕事の事も話せる様になるか??」
「かもな…いやわからん…」
勇は皇安局に入局の内定が決まった時に圭介に「就職先が決まった」とすぐにチャットで知らせはしたがどんな仕事かは機密で話せなかった。しょうがなかったので母親達に説明したのと同じ内容で「警備上の理由で話せいない」とだけ伝えたのだった。
「圭介、それよりも“ねこねこ”ちゃんの動画は見てくれたのか?良かっただろう?ライブ行きたくなっただろう?そして、これが1番大事っ!
“推し”は誰になったんだ?!」
勇がキラキラした目で圭介を問いただす。圭介は近づいてくる勇を上体をそらし且つ腕で距離を保ちながら小さくため息をついた後、呟く。
「…いやー見たよ動画…“猫の手ねこのて”な…10人全員可愛いけど…お前の様な熱量にはならなかった」
「…っ!そ、そんな事は無いだろう!“推し”と迄行かなくてもいいなぁ〜って思うメンバーは居ただろう?」
「うーん、ササラちゃんは清楚な感じで良いと思ったけどなぁ…年上が多くて…」
勇は圭介の発言を聞いてはたと思い出した。圭介は同い年か年下が守備範囲だったのだった。
「あれ?スーちゃんやエナちゃんは?守備範囲だろうに!」
「2人は…2人共にかわいいけど…バブちゃん過ぎる…と思うなぁー」
勇は「そこがもう一つの魅力何のにっ!」と叫びたい気持ちを必死に抑え込むと同時に漏れ出す魔力も必死に抑え「そっかぁー」とだけ返した。
「それより、あの噂聞いたか?勇の家の近くの公園で鯉とかカラスとか猫とかの死骸が多数発見されているんだってな。外傷が無いから新しい病気?とかウィルスとか?噂になっているらしいぞ」
圭介の言い放った“それより”に少し、いや大分カチンとキレそうになったが、その後に続いた内容に直ぐに意識を切り替えた。
小動物とはいえ外傷もなく命を奪うのは結構たいへんだ。【魔法】を使えばとも考えたが“外傷が無く”は難しい。
「昔なら大丈夫だったけど、最近”秀才くん“にイメチェンした勇くんは気をつけないと感染しちゃうぞっ!」
「うん?何か色々ムカつく語彙が出て来ているけど、親友のアドバイスには耳を傾けておくよ」
圭介は勇の受け流しに少しつまらなそうな表情をしたが「気をつけろよ」とだけ言って持ってきたコンビニのサンドウィッチのパッケージを開けて食べ始めた。
勇は先日の夜の事を思い出しながら、自分も持参した弁当を食べ始めるのだった。
お読みいただきありがとうございます。
今作品は全て作者の妄想で出来ております。
現実の言葉、人物、団体、組織などなどは、一切関係がございません。ご了承の上お読み頂けますと幸いです。




