第2話 〜深夜の公園で〜
お読みいただきありがとうございます。
勇達が公園に踏み入れた時間から少しだけ遡る。
▽▽▽
昼間であれば公園を駆け回る子供やペットの散歩で賑わっている深夜の公園。 芝生の上にレジャーシートを敷いて談笑している一団がいる。
「ご主人様〜今度は私の番です。早く私から吸い取って、くださいっ❤️」
まだ少女と言っても良い外見の制服姿の女性が黒づくめの男性にししだれかかる様に身体を密着させて媚びていた。
男性は黒い燕尾服に黒いマントを羽織っていて映画に出てくるような英国紳士の様な格好をしていた。
「あなた、何を抜け駆けしようとしているのっ!今夜は私が1番初めにご主人様に精気を吸っていただくのよっ!」
先程の黒髪ロングストレートの少女と異なる制服を着た少女が目を見開いて講義する。
「まあまあ、可愛いレディー達。争わなくても大丈夫、君たち全員から今宵は精気を貰うから」
「「「きゃーご主人様❤️」」」
男に少女達が一斉に抱きつき自身の体を男に密着させる。
「今宵新月の清らかなエネルギーが君達の精気をより芳醇にするだろう。中天に登るまでもう少しの辛抱だぁーあーははははっ」
男は愉悦の表情を浮かべ見えない新月に向かって叫んでいた。
「おーい、そこの恥ずかしい厨二病の方?もう遅いから子供達を帰してあげてくれないですかね?」
「何奴っ?」
「「何奴っ?」って…完全に厨二病だ、お気の毒に。ねぇ、加恋さん?あの人本当に勧誘するの?」
「…」
「えっ?はい、はい、わかりました。口上は述べますが拒否したら…消しますよ」
男に話しかけた髪をオールバックにして後ろで一つ結いした男性がインカムからの指示に答え不敵に笑った。
「き、貴様達!?どうしてここにいる?どうやって入ってきた?」
「はぁ?何言ってんの?あんなガバガバな結界誰でも入れるって。そもそも侵入された事に気付けて無いだろうお前?」
オールバック長身の男性の右隣でスマホの画面をいじりながら同じくらい長身で短髪のスーツ姿の男が返事をする。
「千里也の言う通りよ、裕?こんな雑魚勧誘しても何も役に立たないから、とっとと消して帰るよ。明日も私、お弁当作らないといけないし」
裕と呼ばれた(ロン毛長身男)の左隣にいるボブカットでダウンジャケットとGパン姿の女性が会話に入ってきた。
「そんなぁ、里見さん身も蓋もない事言わないでください。可哀想ですよ、加恋さんからも口上だけは言えってさっき釘刺されましたし」
「おっ、お前ら!突然現れて何を訳のわからない事を言っている?」
裕達が内輪で話している間に、男と少女達は警戒体制をとっていた。
「あー、はいはい。ごめんなさいね、これから言うことはとっても大事なので、ちゃんと聞いてくださいね。後で文句言われると嫌なので撮影もしているからあしからず」
裕はそう言うと自分の斜め右上を右手の親指で指し示す。男がそちらの方向を見ると手のひらサイズのドローンが裕と呼ばれた男の頭上を飛んでいた。
「それでは、我々は皇安局第3課 捕縛及び処理班の者だ。小橋拓也君が異世界からの帰還者である事は分かっている。大人しく我々に投降しなさい。もし抵抗や反撃などした場合には直ちに処理に移行する」
裕はスマホの画面を見ながら目の前にいる小橋拓也と呼んだ男に内容を伝えた。
「っで、どうするよ小橋君?」
「い、いきなり現れて投降しろとか、消すとか訳が分からない事言ってんじゃねぇよ!そもそも、お前達なんかに倒されるかよっ!」
「あーっ、本っとに厨二病だね。返答もテンプだよ。まぁいいか、こっちは手間が省けたし。加恋さん?本人拒否によりこれより消去します…了解。千里也、里見宜しく!」
裕はバックステップで後ろに下がりながら両サイドの2人に指示を出した。
「千里也さんだ、バカ。了解」「里見さんだ、ボケ。了解」
千里也は両手に小太刀を、里見は長杖を持ち男に向かって走り出した。
この物語は作者の妄想の産物のため、現実の人物、団体、組織には一切かんけいがございません。
ご了承の上、お読みいただければ幸いです。
更新は週3回を目標に更新します。
宜しくお願い致します