第19話 〜 能力試験?〜
テニスコート程の広さの白い部屋の中央に置かれたパイプシングルベッドに腰をかけた勇が少しイライラしながら頭を抱えていた。
「山田局員候補…能力試験は終了です、お疲れ様でした。次の試験にお進み下さい」
部屋の隅に設置されたスピーカーから無感情のアナウンスが能力試験の終了を告げた。勇は『何が試験終了だ?』と煮えくりかえる激情を必死に抑えながらゆっくりと立ち上がる。
勇が立ち上がると壁面の扉が自動的に開く。激情をなんとか抑えながらゆっくりと扉に向かって移動した。
「お疲れ様です、山田局員候補。すぐに次の戦闘試験が始まりますので更衣室で戦闘準備後、待機願います」
「おい、三葉さんよ、あれは何だ?あんなのを我慢しながら生きていかなければならないなら俺は全部をぶち壊すぞっ?」
勇の感情など全く考慮しない様子で冷静に次の試験について説明をする三葉に濃密な殺気をぶつけながら少し大きな声をあげる。
「くっ、山田さん。落ち着いてください、これはあくまでテストです。正局員になられた局員のご家族にはそれなりに警護が着くので、ご安心下さい」
「何を安心すればいいんだ?テストと分かっていてもこんなに気分が悪いのに…くそっ」
やり場のない怒りを勇は壁を殴り晴らそうとする、壁は勇が殴った部分を中心に半径2m程陥没した。
◁◁◁
『ここは?確か俺はベッドに横になって…そうかこれが能力テストの精神世界か…それにしても触った感触まであるなんて、これをかけている術者はそうとうな能力者だな…』
「山田さん、これから局員の1人が幻術を掛けます。抵抗せずに受けてください。試験内容は受験者それぞにより変わりますが、大体大切なご家族の救出になります。救出時は一般的な男性が振るえる範囲の戦闘力までに抑制して下さい。それを超えた力を振るった場合は試験失格になります」
つい5分前に三葉から説明された事を思い出しながらぼんやりと勇は家のすぐそばの商店街らしき場所を見ていた。
「お兄ちゃん?何をぼんやりしているの?早くしないとお母さん待っているよ?」
「おかあさん?何を言っているんだ、夏菜子?お袋は家で寝て…ああ、これは試験の設定か…」
「試験?設定?何を厨二病みたいな事を言っているの?キモっ、もう高三なんだからしっかりして。それよりも…」
「「「キャーー」」」
夏菜子が会話の続きを話そうとした時、進行方向から数人の女性の叫び声が聞こえる。勇と夏菜子は顔を見合わせて頷くと叫び声が聞こえた方向へ走り始める。
「オラオラオラ、見せもんじゃねぇえんだ。とっとと離れろ、さも無いとこのババアの首掻っ切るぞ!」
商店街にある地方銀行の入り口に3人の目出し帽子を頭から被った男性らしき物たちが手に刃渡り20cmほどのナイフを持って周囲の野次馬たちに向かって叫んでいた。
3人は銀行強盗の様で、大きなリュックサックをそれぞれ背負い逃走を測ろうとしている様だった、その人質として中年の女性の首にナイフを押し当てながら叫んでいる。
「お母さん!」
夏菜子の悲痛な声が上がる。そう、強盗犯が後ろから片手で羽交い締めをしながら捕まえている女性は勇達の母親の詩織だったのだ。
「お母さんを離してっ!」
「馬鹿、犯人を刺激するな」
母親を助けようと飛び出そうとする、夏菜子を抑え勇は呟く。夏菜子はそれでも物凄い力で勇の腕を振り払おうと抵抗を続けていた。
『全く何て試験だっ!これはどうすればクリアになるんだ?殺さないようにあの3人を取り押さえればいいのか?それにしても、なんだこの夏菜子の力はっっ?』
抵抗する夏菜子を力を込めて抑えているがそろそろ、一般人の力を超えそうだと思いながら勇は状況把握を行っていた。
「お前達っ!無駄な抵抗は辞めるんだ!既に周囲は複数の警察官で包囲した、ゆっくりと人質を離し地面に両手を着けろ!」
勇達から少し離れた所に1人の制服警官が現れ刑事ドラマのようなセリフを大きな声で言いながら拳銃を水平に構えていた。
『はぁ?それは、悪手だろう?普通1人で現場に来るか?』
「うるせぇ!打てる物なら打ってみやがれ!」
制服警察官の登場に一瞬怯んだ、銀行強盗達だったが、拳銃を構えている警察官の方に詩織を盾にする様に向き怒鳴った。
「脅しでは無い、無駄な抵抗は辞めるんだ!」
「パンッ!」
お約束通りのセリフを言った制服警官は拳銃を空に向け引き金を引いた。あたりに乾いた音が鳴り響く。そして再び警官は拳銃を水平に構え銀行強盗に向ける。
『おいおい、ちょっと待て。今のは空砲だからいいが、次弾は実弾だろう?こんな人だかりで拳銃を水平に構えるな!少しでも外れたら誰かが死ぬだろう!』
「はぁはぁはぁ、この大人しくしろと言ったら大人しくするんだっ!」
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今作品は全て作者の妄想で出来ております。
現実の言葉、人物、団体、組織などなどは、一切関係がございません。ご了承の上お読み頂けますと幸いです。




