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そして見つける
金色の小舟が、鈍色の海の果てに戻っていくのをずっと手を振って送り、それが見えなくなった時にようやく、近づく車のエンジン音に気づいた。
「良かった、まだちゃんと居て」
降りてきたマネージャの林さんが薄手のコートを差し出した。
「カズくん無しのシーンだけ先に撮れたから、早く戻ろう」
「ごめん、我儘言って」
「誰だって少しひとりで考えたい時もあるし、監督も反省してるし、ヘーキよ」
うん、と僕はまた海の方に向く。
海は相変わらず荒れていた。
「カズくんが言うように、ゾンビだって何かしら背景とかあってもいいのかもな、なんて監督、珍しく殊勝な顔してたよ……あれ」
林さんは僕の顔を覗き込んだ。
「何かこの世ならざるモノ見た、って顔してる?」
少し考えてから、いいや、と僕は笑って車に戻る。
乗り込む前に、もう一度海に目をやって答える。
「見たんじゃない。見つけたんだ」
〈了〉