空き地
このところ、大きな幹線道路から一本入った路地に空き地が目立つようになってきた。
古い家屋が軒並み潰されて…、どんどん、どんどん、空間が広がっている。
茶色くすすけた家屋、木々が伸び放題になっていた荒れ地、ひび割れたアスファルトの駐車場、硝子戸が割れた本屋に屋根の落ちた居酒屋、一本もドリンクの入っていない自動販売機が並ぶプレハブ…。あらゆる老朽化した建物が崩され、茶色い土が丸出しになり、立ち入り禁止のプレートが刺さっていく。
一昔前、この場所は、それなりにではあるが…人通りがあった。
小さなスーパーもあったし、団子屋にたこ焼き屋、放課後クラブ、そろばん塾など、地域に根付いた店や施設が並んだ、生活感のある場所だったのだ。少し離れた場所にある神社では小さいながらも盆踊りや年末の振る舞いがあって、ご近所さんのみならず遠方の人も飛び入り参加する程度には賑わいがあった。
……時の流れというものは、実にシビアなものだと思う。
人は老いるものだ。町内を盛り上げてきた人たちはいつまでも若いままでいるわけではなく、年を重ねて引退してゆく。地域活性の一端を担っていた人が第一線を退いたあと、後継者となる人物が現れないことも少なくない。加齢を理由に経営を諦め、廃業を選んだ店舗も一軒や二軒ではない。
建物も古くなっていく。住む者が、管理する誰かががいなくなれば、建物はすぐに老朽化するのだ。住めるような状況でなくなれば、潰すしかない。
がらんとした砂利の広がる空間を見ていると…物悲しくなる。
路地裏がやけに見通しが良くて…、人口は本当にすさまじい勢いで減っているのだなと実感せざるを得ない。子どもの姿もあまり見かけないし、この地域の発展は…もう見込めないのだろう。
人類の衰退は、もはや止めようがないレベルで進行しているのだ……。
悲しみに浸っていた、私であったが。
突如、大きな看板が、空き地のど真ん中に出現し。
なんと、この辺り一体に…大きなショッピングモールが立つことが判明し!!
あれよあれよという間に、路地裏も表通りもアホみたいににぎやかになりましてですね?!
ものすごい渋滞、信じられないくらいの行列!!
毎週末行われるイベントの数々に、騒音を撒き散らす若者!!
正直なめてました、新規オープンのモールの底力!!!
人というのは、まだまだ滅亡しそうにないな…そんなことを思ったという、お話……。