第44話 ノーランド対策
「ノーランドの海賊は単なるならず者の集まりではないです。ノーランドの西方を治める豪族の水軍でして、訓練され統制されていて、恐ろしく手強いです」
海軍大将のカイゼルがノーランドの海賊について説明してくれている。
カイゼルは海軍ではヒューイと私の上官ではあるが、皇太子と皇太子妃に対しては、さすがに敬語を使う。
カイゼルとヒューイと私とで、ノーランド対策を協議中だ。
「まず王国の東沿岸に対する略奪行為が、上手くいかないことを分からせることが重要かと思いますわ」
「沿岸警護を増強するのですか?」
「そうですが、長い海岸線を敵の得意な海上で守るのは困難です。防衛線が間延びしてしまい、敵に付け入る隙を与えてしまいます。防衛は一ヶ所に集中させたいです」
「それは分かりますが、どうやって敵の攻撃を集中させるのですか?」
「東沿岸の町や村を捨て、一ヶ所に集めて、そこで暮らしてもらうようにしようと思っています。大きな漁港と海軍基地を持つ巨大な港湾都市を作り、そこに民を集めます」
「ですが、村民や町民は簡単には故郷を捨てないのでは?」
「アードレー家の農奴解放で民の行動心理を色々と学びましたが、安定した収入と適度な自由と安全がある場所に民は集まって来ます。移動費用と道中の安全を保証すれば、移動を加速できます。残っても略奪しか待っていないのですから」
「そう簡単に行くものですか?」
「もちろん簡単ではないです。きちんとした説明と長期に渡る支援が必要です。でも、長い海岸線を守り抜くよりは、はるかに簡単ですし、コストもかかりません」
「なるほど。海軍の出番はなく、戦争は起きない、ということですかな」
「いいえ、一発ガツンとかまさなければ、我々がノーランドを恐れて、ただ単に亀のように守っていると思われてしまいます。彼らの得意な海の上で大敗北させる必要があります」
「ほう。どうやって勝利しますか? 彼らは手強いですぞ」
「海上では彼らは強いですが、海中や空中ではどうでしょうか?」
「海中? 潜水夫でも潜らせるのでしょうか?」
「潜水艇での攻撃で、敵の足を奪えませんか? ダンブルの進んだ技術があれば、実用化は可能です。それと、空からの爆撃も有効だと見ています。飛空挺からの爆撃です」
「確かに上と下への備えはしていないでしょうな」
「将来の海戦は空も海の中も戦場になります。敵がそれに準備できないでいるうちに、大被害を与えましょう」
「カイゼル大将、実はカトリーヌにダンブルの軍事力を説明したとき、軍備の近代化を進めるように言われてね。新技術を研究する機関を作って、研究と実用化の実験をしているんだ」
「はい、それは最重要機密事項ということで、陛下からうかがっておりました」
「そうか。これまでも兵器の近代化は進めていたつもりだったのだが、兵器だけを軍人だけで考えていてはダメだと言われたんだ。兵器だけではなく、産業の研究も一緒に行い、軍事と産業の技術交流をさせることにした」
「ほう、あれはそういう機関だったのですか」
「すでにいくつか実用化の目処が立っている。それでね。彼らは実戦でのデータが欲しくてたまらないんだよ。ノーランドをいつ攻めるんだ、としつこくてね」
「ははは、軍人よりも研究者の方が戦争をしたがるとは困ったものですな」
「前にも話しましたが、私は敵の兵士はいくらでも死んでいいという考えですの。人類の科学技術の発展に軍事は欠かせないですわ。率先して研究材料になってくれて、本当に助かりますわ」
「はは……」




