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第42話 善後策

 王都はあっけなく陥落し、ダンブル軍は王宮に無血入城した。


 新王ジョージは親衛隊五百騎ほどと先王からの忠臣十数名に助けられ、南の地に逃れた。


 その後、王都を含めた王国北部の三分の一を所有するアードレー家とその従属貴族が、ダンブル国への帰属を表明した。


 だが、ダンブルは王国北部を併合せず、新王国を建立し、王国は南北に分断した。


 王国南北朝時代の幕開けである。


 北朝の初代君主にはダンブル国が推奨するシャルロット・アードレー女王が即位した。


 私は懐かしの王国の玉座の間で、ヒューイとシャルロットと善後策を協議していた。


 シャルロットの後方にはトーマス中尉が、私の後ろにはリリアが控えていた。


「シャルロット、ジョージにはマルクスがついているからまだ油断ならないわよ」


「ええ、お姉様、今後はどのように国策を進めていけばよろしいかしら」


「内政はお父様に任せてしまっていいと思うわ。王国の諜報部は間抜けだから、お母様に立て直しを依頼するといいと思うわよ。お母様はタンブルの情報部も手玉にとっていらしたから」


 ヒューイが苦笑いしている。


「ただ、身内ばかりを重用すると、嫉妬を招くから、他の要職には親族以外を重用するといいわよ」


 シャルロットはメモを取っている。


「はい、お姉様。ところで、軍事はダンブルにお任せでよろしいでしょうか」


 この質問には、私の代わりにヒューイが答えた。


「それは任せてくれ。トーマスの配下も王国に何人か残す予定でいる。それと、南はゾルゲに当たらせようと思っている」


「ゾルゲ将軍は裏切らないでしょうか?」


「その可能性はないと思うわ。これからの統治はダンブルではなく、王国自身で行うものでしょう。彼が南に忠誠を尽くす意味はないわ。それに、彼はお母様の言うことなら何でも聞いてくれそうよ」


「そ、そうなのですか……。何だか気持ちの悪い殿方ですね」


「私には今ここにいるリリアのほかにもう一人ルミっていう護衛がいるのだけど、彼女に言わせると、ゾルゲ将軍はかわいいみたいよ」


 ヒューイが私たちの会話に割って入る。


「と、とりあえず、ゾルゲがかわいいかどうかは置いておかないか。問題は南の動きだが、リリア、情報部からの報告内容の説明を頼む」


 ヒューイったら、ゾルゲにも嫉妬しちゃうの?


「はい、ご報告します。ジョージたちはエーベルバッハ侯爵を頼って、リーゲン城を拠点にしています。東のノーランドと北の大陸の各国に救援依頼を出したそうです」


 ノーランドは東の島国だが、大陸の東の沿岸で海賊行為を働く戦闘集団で、その戦闘力は無視できない。


 北はダブリンと交易を行っている大小様々な国があるが、ダブリン対岸のヘルツ王国が一番の強国で、今はダンブルとの戦闘はないが、昔からダンブルとは仲が悪い。


「すぐには手を出しては来ないだろうが、まだまだ予断は許さないってところだな」


「そうね。でも、南は普通にいけば自滅するわ。シャルロットの国民からの人気は絶大よ。南の人たちは北を羨望の目で見ているのよ。それと、北は農奴の解放が進んでいるから、南から北への農民の流出も止められないわ」


「それは確かだが、農奴解放は北の大陸からすると、封建制を揺るがす都合が悪い制度だと見ていると思うし、ノーランドは、戦争を仕掛けないと食っていけない国だからなあ」


「ノーランドには食糧支援が重要と思うの。それと、漁業の改革支援ね。敵対するよりも味方にする方がお互いにいいはずよ。問題は北ね。過去の不幸な歴史の感情的なしこりが残っていそうよね」


「カトリーヌと俺のように、みんな一つになればいいのになあ」


「もう、ヒューイったら、みんなの前で突然何を言い出すのよ」


「さ、さあ、今日はこのあたりで、また明日、朝議で廷臣たちを交えて、続きを協議しましょう」


 シャルロットの提案にリリアが飛びついた。


「その通りですっ。ヒューイ殿下、カトリーヌ様、そろそろ失礼いたしましょう」

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