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第31話 危険な策

「娼館ですか?」


 トーマスに用意してもらった別室で、カトリーヌとリリアは夜も明けないうちから朝食をとっていた。


「警備隊長のゾルゲに裏ルートで会うには、娼館に手配してもらうのが、一番確実で、しかも、手っ取り早いと思うのよ」


 まるでカトリーヌが行くような口ぶりだ。リリアは嫌な予感がした。


「まさか、カトリーヌ様が行かれるのですか?」


「そうよ」


「き、危険過ぎます! それにゾルゲにやられちゃったら大変です」


「交渉に行くのよ。やられちゃうわけないじゃない。リリアはエッチね」


 リリアは殺されるという意味で言ったので、エッチなのはカトリーヌの方だとリリアは一瞬思ったのだが、それどころではなかった。危険な行動を止めなければいけない。


「ダメです。私が代わりに行きます」


「リリアも一緒に行くのよ」


「え? いいえ、まずいです。まずいです。カトリーヌ様が行かれるのは危険すぎます。ルミを待ちましょう。ルミに行かせましょう」


「私が待つのが一番嫌いってこと、忘れたの?」


「カトリーヌ様、昨日、ゾルゲの兵に殺されかけたのですよ?」


「それよ。ゾルゲにも王国にも私を殺すメリットが全くないの。誰かの陰謀にゾルゲは乗せられているとしか思えないわ。それに気づかせるのよ」


「理由はともあれ、カトリーヌ様の暗殺に失敗したのですから、のこのこ出て行ったら、これ幸いと殺されてしまいます」


「もちろん皇太子妃として会うのではないわ。新人の姉妹娼婦として会うのよ」


「やっぱりそんな危機なことを!」


「ゾルゲがどうして私を殺そうとしたのかを早く知りたいのよ。上手くいけば、ゾルゲをこっちに寝返らせることもできるわ」


「敵の真っ只中に飛び込んで行くなんて、無謀過ぎますっ」


「勝算が十分にあるから、無謀ではないわよ。虎穴に入らずんば虎子を得ずよ。最短最速で、かつ、誰も死なずにテンタウルス山を手に入れられる策よ。やらない手はないわ」


「ですが……」


「時間を無駄には出来ないわ。さっさと片付けて、治水工事しないと、また秋に氾濫して、多くの土地と人々を失ってしまうわ。新しい専門家が来る前に憂いを取り除いておきたいの」


「もっと安全な策はないのでしょうか?」


「止められても行くわよ。リリア、ついてくるんでしょう?」


「……はい、ついて行きます」


 リリアは観念した。


「ヒューイに伝言を残しておかないと、心配させちゃうわね」


「妻が娼館に行くこと以上に心配することがありますでしょうか?」


「もう、皮肉言わないの。町娘の衣装と、そうね、指輪と腕輪とネックレスを持って行くわよ」


「……はい」


「さあ、行くわよ」


***


 トーマス中尉が朝早く隠れ家に戻って来たときには、すでに二人の姿は消えていた。


 ヒューイ宛の置き手紙を読んで、トーマスは真っ青になった。


「なぜ行かせたっ!?」


「トイレに行かれると仰って……。トイレまではついていけないです。それに、まさか出ていかれるとは……」


「まずい。コーキーはすぐに殿下に知らせに行ってくれ。俺はすぐにお二人の後を追う。三人残して、全員目立たないように武装してついて来い。すぐに出るぞ。今なら追いつけるはずだ」


 しかし、トーマスたちは追いつくことはできなかった。

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