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第30話 大目玉

 深夜に事務所に現れたヒューイにトーマスは大目玉を食らっていた。


「お前たちがいながら、カトリーヌを危険にさらすとは、寝ぼけてでもいたのかっ!?」


「申し訳ございません。マリアンヌを監視せよとのことで、人手がいつもより少ない状態でして。それと、カトリーヌ様は非常に鋭いお方ですので、いつもあまりおそばまで近寄れないのです」


「カトリーヌが鋭いのは分かっている。お前たちがカトリーヌを密かに護っていたことはバレてはいないだろうな」


「多分バレていないと思います。保護してしまったのは不味かったでしょうか?」


「いや、保護したのはいい判断だ」


「そう言えば殿下」


「何だ?」


「カトリーヌ様が私の名前を覚えておいでになられたのです。一回しかお会いしていないのにですよ!」


 ヒューイがトーマスをジロリと睨んだ。トーマスはヒューイの二つ年下だが、幼少時から同じ道場で剣を学んだ仲だ。


「それがどうした。単にカトリーヌの頭がいいからだけだろう」


「そうでしょうか?」


「それ以外に何があるというのだ?」


「い、いえ、何もないです……」


「お前なあ、夫の俺の前でよくそんな嬉しそうな顔ができるな」


「いえ、嬉しくないです。すいません」


「何だと? カトリーヌに名前を覚えてもらっていて、お前は嬉しくないのか?」


「本当は嬉しいです」


「ふん、気にくわないやつだ。今回の失敗もあるし、カトリーヌの護衛は別のやつに変えるか?」


「そ、それだけはおやめ下さい。カトリーヌ様をお守りすることは、我ら第一班の天職にございます」


「三人の専門家が犠牲になってしまったのは残念だが、カトリーヌとリリアは無事だったから、今回は咎めはしないが、こんな失態はお互い今回限りにしよう。もうカトリーヌを狙う怪しいものはいないか?」


「王国側の山林は調査が困難です。まだ潜んでいるかもしれません」


「やはり軍を待った方がいいな。カトリーヌに会いたくて仕方ないが、敵が俺を見張っている可能性は高いんだろう?」


「はい、一両日のご辛抱です」


「問題はカトリーヌが我慢して潜んでいてくれるかだが、カトリーヌは何をしている?」


「はい、テンタウルス山を王国から手に入れる作戦を練っておられます」


「ほう。それは楽しみだな」


「それでは、私は戻ります」


 トーマスが立ちあがろうとするのをヒューイはトーマスの服の裾を握って止めた。


「やはりちょっと待て。お前が戻れて、俺が戻れないのは、何だかおかしくないか?」


 トーマスはこの人は何を言い出すんだという顔をした。


「あの、単なる中尉の私と皇太子で陸軍中将の殿下では注目度が違いますよ」


「すり替わるってのはどうだ?」


「危険です。それに、討伐軍が到着したときに誰が指揮をするんですか?」


「くそう、お前が羨ましいと生まれて初めて思ったよ」


「殿下、たった二日じゃないですか。しっかりして下さいよ。まるで子供のようですよ」


「お前、何でそんなにニヤニヤしている?」


「し、してませんよ。そういう顔なんです」


「お前、さては帰ったら、カトリーヌに会えるから嬉しいんじゃないか?」


「そんなことないですよ」


「何だと!? 嬉しくないのか?」


「いや、嬉しいですよ、楽しみです」


「何だと、貴様、不届なやつだ」


「もう、何を言ってもダメじゃないですかっ」


 トーマスはやっとのことで事務所を出た。


(殿下はダメダメになっちゃってるじゃないか。この国、将来大丈夫かなあ)

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