表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/47

第29話 次の一手

 トーマスたちはリリアから河原で起きた出来事を聞かされ、驚いたような知っていたような微妙な表情だった。


「何か心当たりがあるのですか?」


 リリアがトーマスに詰め寄った。


「王国の国境警備隊が数百人の兵士を国境に展開しているのは知っていました。でも、軽装備でしたし、いつもの軍事演習だと思っていました。まさかカトリーヌ様を襲撃するなんて、王国は何を考えているのでしょうか。我が国との戦争が怖くはないのでしょうか」


「山賊という可能性はないのですか?」


「それは絶対にないです」


 両国が警備隊を巡回させている緊張区域で、山賊がやっていけるはずがなかった。


 トーマスとリリアのやり取りを聞いていたカトリーヌがつぶやいた。


「王国はよくも私たちの時間を無駄にしてくれたわね。将来のことを考えると、治水のために、ちょっと国境をずらした方がいいかもね」


 リリアはカトリーヌの言葉にギョッとした。


「カトリーヌ様、えらく簡単に仰いますが、簡単にずらせるものでしょうか」


「王国から山を頂きましょう。我国の技師が三人も殺されたのよ。山一つでは安すぎるから、本当は北の州を一つ頂きたいぐらいよ」


 そう言って、カトリーヌはトーマスに指示を出し始めた。


 リリアはカトリーヌの心胆の強さに改めて感心していた。つい先ほど殺されそうになったのに、自分よりも五つ年下のまだ十九歳のこの美しい娘は、冷静に状況を分析して、次の一手を打ち始めている。


「かしこまりました。本業のオペレーションを遂行しつつ、仰せのとおりにいたします。奥にお部屋をご用意しますので、安全が確保できるまでそちらでお待ち下さい」


 トーマスはそう答えて配下にテキパキと指示を出している。


 警ら中のものも含めて、二十名がここを拠点に活動しているという。


「恐らく麓の事務所に殿下が飛んで来られると思いますので、私がご報告に上がるように致します」


 トーマスが事務所に行くと聞いて、リリアはダンブルポートへの伝言を依頼した。


「王妃様に連絡を入れたいのですが、事務所から伝書鳩を飛ばして頂けますか? ルミをカトリーヌ様の護衛に追加して欲しいと」


 ルミはリリアに次ぐ第二席のクノイチだ。


「かしこまりました」


 トーマスは元気に走って出て行った。


「トーマス中尉たちは、ここで何をしているのでしょうか」


 別室にカトリーヌと一緒に入ったリリアは、ボディアーマを外しながら、カトリーヌに尋ねた。


「間違いなく私たちの護衛ね」


「そうでしょうか?」


「ええ、今回の敵はかなり優秀で用意周到だったから、危ない目にあってしまったけど、敵が潜んでいるのを知らせてくれたり、追手を別の方に誘導したりしてくれたはずよ。恐らくヒューイの指示だわ。ああ、護られてるって、幸せな気持ちになるのね」


 カトリーヌが両手を組んで、どこを見ているか分からないが、斜め上の方を見て、瞳を潤ませている。


「は、はあ」


 カトリーヌとヒューイのこういったやり取りが、失礼かもしれないが、リリアには何だがコミカルに見えてしまう。頭脳明晰な二人が、えっ!? て思うほどバカになるのだ。


(いちいち芝居がかった感じがするのよね。本人たちは大真面目だけど。でも、恋ってこういうものなのよね。外から見たら恥ずかしくて悶絶しそうなことを平気でやっちゃうのよね)


 だが、カトリーヌを護っていたというのは本当だろうか? リリアは何本か弓矢を背中に受けている。防具の隙間に当たっていたら、ひょっとすると死んでしまっていたかもしれない。リリアが死んでしまったら、カトリーヌに弓矢が当たっていたかもしれないのだ。


(もし、護っていたとしたら、トーマス中尉は今回の件で殿下から大目玉を食うわね)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ