表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/47

第24話 マリアンヌの蠢動

 カトリーヌの母、マリアンヌは、実家の一族がすべて処刑されるのを公開処刑場で見ていることしかできなかった。


「カトリーヌは私からすべてを奪っていくのね」


 両親や兄弟たちが無実を訴えながら、胸を槍で刺されて処刑されていく。目を覆うような場面が続くが、マリアンヌは一族の無残な最期を目に焼きつけた。


 シャルロットは借りてきた猫のようにおとなしくなり、カトリーヌから目をつけられぬように王妃の公務を粛々とこなしている。そのため、国民からの評判も上々で、容姿が美しいこともあり、国内での人気が急激に上昇している。


 夫のロバートはカトリーヌに完全に迎合してしまっている。カトリーヌの協力者となり、先進的な政策の実験台を率先して領内で実施しており、カトリーヌと文通をして、意見交換をしているらしい。


 驚いたことに、新政策はなかなか好調なようだ。噂を聞きつけた農民たちが他領から流入し、農地面積がどんどん増えている。また税収が上向き、財政も好調で、離反していた貴族たちがノウハウを教わるために戻ってきている。


 だが、マリアンヌのカトリーヌに対する憎悪は大きくなるばかりだ。最愛の息子を奪われ、仲はあまり良くはなかったが、それでも幼少のころからいっしょに育てられた兄弟を殺され、これも馬は合わなかったが、老齢の両親も殺された。


 息子が事故死したとき、こんな娘を産むんじゃなかったと後悔したが、今では、こんな娘は世の中に存在していてはいけないとまで思うようになっていた。


 力のない自分が、どうすればカトリーヌを討つことができるか、マリアンヌは考えた。シャルロットはすっかりカトリーヌに怯えてしまっているし、ロバートはカトリーヌの才能にのぼせ上がってしまっている。


 かくなる上は、娘の夫である国王を使うしかいない。そう思ったマリアンヌは単身で新王ジョージに謁見を申し込んだ。


「義母上はダンブルが戦争を仕掛けてくるとおっしゃるのか?」


「はい、左様でございます。夫から陛下もカトリーヌの復讐相手の一人だと聞きました」


「そのような話はアードレー卿からは聞いていないし、復讐のために戦争を仕掛けるなど、常軌を逸していると思いますが……」


「ヒューイ皇太子は娘にメロメロで、ダンブル国王も娘の言いなりと聞いています」


「皇太子は分かりますが、ダンブル国王まで言いなりなど信じられませぬ。そもそもなぜアードレー卿ではなく、義母上が報告するのです? 一族を殺され、私を恨んでおられるのか?」


「滅相もございません。全てはカトリーヌの陰謀であることは承知しています。もう娘とは思っておりません。カトリーヌは王国に仇なす悪女にございます。早めに対処された方がよろしいかと」


「分かりました。国境警備隊に注意するよう通達しておきます」


 マリアンヌは国王の対応に不満だった。直接軍部に働きかけることはできないだろうか。


「陛下、ありがとうございます。一つお願いがございます。国境警備隊の方々に情報提供と慰労を兼ねて、私から衣類やお菓子などの差し入れをお持ちしたいのですが、許可していただけますでしょうか?」


「義母上がですか? それは兵士たちも喜びますので、反対する理由はないですが……」


 いぶかしげに思いながらもジョージはマリアンヌの申し出を許可した。


 マリアンヌは国境までの通行許可証と国境警備隊の総司令官への面会許可証を入手することに成功した。


 侯爵夫人にのし上がったときと何も変わらない。今年で四十歳を迎えるが、王妃の姉と間違えられるほど美貌は健在だ。この美貌と己の才覚をもって、目的を達成するのだ。


 マリアンヌはばっちりとメイクを整え、体のラインを強調したドレスを着こみ、国境警備隊の作戦本部の前に立った。


 守衛二人がしばらくマリアンヌの美貌に見惚れていたが、すぐに門前を固める。


「おどき。マリアンヌ・アードレーよ。勅命を持ってきたわ。将軍に会わせなさい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ