荷運び
「はい、これ、今日の分ね」
「うわぁ、今日は一段と重いですね」
「しょうがないよ。新学期だから」
「返品は不可なんですか?」
「何か特別なことがあったらできるけど」
「時間が無いですからね」
おじさんとのやりとりを終えて、私は箱を持って、積み上げ場所まで向かいます。
「よお、これもよろしく」
「うげえ」
運んでいる途中、通りすがりの人に、また箱を積み上げられてしまいました。
「台車使っていいですか?」
「使ってもいいけど、できるだけ遅く運ばないといけないだろ?」
「そりゃそっか」
つくづく、難儀なお仕事です。
その日によって道の長さは変わるし、荷物の量も変わる。私のお仕事は、荷物を目的地まで運ぶことですが、荷物を運ばずに済むことが最良です。
「あ、これ貰ってくね」
荷物が少し軽くなりました。誰かが持っていってくれたみたいです。
「よお、これ貰ってくわ」
さっき私に荷物を渡した通りすがりの人が、箱を持っていってくれました。
なんだか今日は良い日です。すっごく、すっごく久々に、荷物が少ない日になるのかも。
そのときでした。
「これ、全部俺にくれ」
「え、全部ですか?」
険しい顔をしたおじさんが、私の荷物を全部持っていってしまいました。
私は手持ち無沙汰になりました。手持ち無沙汰になって、荷物の積み上げ場所まで行ってみました。
「ああ、そういうことか」
私が今まで積み上げてきた荷物は、見事に荷崩れを起こしていました。そうして、しばらく眺めている内に、燃やされて、なくなってしまったのです。