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冷たい熱狂

作者: 雨宮吾子

 空を行くヘリコプターを見守るざわめきのようだと僕は思った。一時の関心も次なる大波を前に退潮していくもので、そうとなれば僕を襲うこの眩暈の先に待つものは何だろうかと恐ろしくなる。ベッドに腰掛けてからゆっくりと身を横たえると、嵐の前の静けさという言葉がまた浮かんでくる。バスケットゴールから弾かれたボールを抱くようにして、僕は死というものを抱こうとしているのだ。目を閉じれば、いつもは騒がしいクラクションの音が妙に聞こえてこないことに気付かされる。革命でも成ったのだろうかと、僕は想像の赴くままに幽体離脱を図ろうとした。けれどそんなに都合の良い話はなく、ハイウェイ上の装甲車の中に出来上がった組閣本部の名簿に目を通すことすらできなかった。とにかく他人の声に触れていたい。その寂しさがこの世を離れようとしていることの証左でもあるようで、僕は伸ばしかけた手を止めた。死をあるがままに受け止めること、その冷たい熱狂に僕は魅せられ始めている。空虚な熱狂の後に来るものは、果たして何だろうか。僕は、僕でない何者かに化していくことを半ば期待しながら、ゆっくりと眠りの中に落ちていった。

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