7 虚実
「これでは唐突過ぎたか、ユニス君、君は特定の儀で色でなく召喚術を持つ者がどうなるかはどのように学んだかね」
「名と顔を変えた上で、平民として暮らすと」
「そうだね」
騎士団長は恐ろしく無表情になりながら、
「だが実際は処分されるのだがね」
「処分ですか」
「そうだ、ユニス君に起きた事はそんな珍しい事ではないのかな、力が色でなく、形で現れた者のほとんどは裏で処分されてきたね、その証拠にユニス君も力が形で出るなんて、教えられなかっただろうね」
「はい」
「ユニス君も習っただろう、その始まりの召喚者は次元を超えてあらゆる魔物、亜人を呼び出し、使役して破壊の限りを尽くし、争い合っていた国々もこれには一致団結して、この召喚者を滅ぼす事には成功したという、しかし誰かが言った「新たに召喚者が生まれたらどうすれば」と、そこから先は大変だったようだね、召喚者狩りが始まり、その中には召喚者でないのも多くいたという。そしてその混乱を収めるべく発明されたのが」
「特定の儀というわけですね」
「そうだ、この発明のおかげで召喚者以外が処刑される事はなくなった。しかし、召喚者に対しては皆殺しの憂き目にあってしまったがね。」
騎士団長は顔を手で覆いながら、そう嘆いた。
「あのそれは仕方がなかったのではないですか」
「、、、、、、何故だね」
「そんな、世界を滅亡に追いやった存在に恐怖するのは当り前の事ですし、それを駆除しようとするのも当然のことではないですか」
「「ふざけるな」」
とそこまで大人しく座っていたエザトリーとデランドはユニスへと詰め寄った。
「なぜ周りと違う力を持っているだけで、その者が持つ個性も性質も考慮せず、即処分されなくてはならないんだ」
「ご主人様、俺を呼び出したんだ、そんなあっさりと死んじまったら、俺の存在まで軽んじられてるみたいじゃねーか」
「二人の言う通りだね、生来の能力だけで人の価値は決めてはならないし、それを通せば、その能力を持っていなくとも迫害の輪は広がり、結局は殺戮の嵐となるわけだね、それは兎も角話には続きがあってね」
騎士団長は立ち上がった二人に手で座るように指示しながら
「この召喚という異能は効率がかなり悪いらしくてね、召喚体を維持するのにかなり莫大な魔力を消費するらしくてね、今ユニス君は一切の魔術が使えない状態なんだね」
「どうりで」
ユニスは周囲を見渡し、腕を上下に動かしながら、
「周囲の魔力が感じられないし、体が酷く怠いんですね、いやでもそれじゃ」
「あぁ、始まりの召喚者の魔力量は簡単な身体強化でも天を裂き、地を割ったと伝えられている、だから、安心したまえ君のように一体を呼び出すだけで魔力がカラカラになる者に世界を滅ぼすなんてできないから。だが」
騎士団長は弛緩した緊張させるように
「世間及び上層部はそうは思っていない、理屈でなく感情で判断するいまだ過去の恐怖を引きずっているんだね、それでね、今この国のパラセ国、国王ホアセ・スタンド陛下もこの現状を危険視していてね、以前から召喚者の保護を目的に各地を調査していた時に一番に見つかったのが」
「私だったというわけですね、それにしても陛下自らが勅命を」
ユニスはようやく壮大な話に頭がついてきたのか、目が真実味をおびてきた。
「陛下も陛下になる前から、ただその能力を持つだけで処分されてしまう現状には疑問を抱いていてね、何とか改善できないか苦心されているのだね。フォウンタイン家のお取りつぶしも陛下の支援がなければ、こうもうまくいかなかっただろうね」
「そうですか」
「王といってもなんでも決定できるポジションにいるわけではないのだね、周囲の貴族に意に反する事ばかりすれば、国を二つに割りかねない、何とか、身内問題として無理やり問題を収めたが、こんな手は二度は通用しないだろうね。ではどうするか、ユニス君以外の召喚者達を大手を振って歩いていけるようにするにはどうするか」
騎士団長は溜めて言葉にした。
「陛下からこんな提案をされた「召喚を持った子を一人選び、騎士学校へと入校させ、素晴らしい成績を収め、卒業したところで実は召喚の力持っていました作戦」はどうかねと」
「それでですか、私に最強になる気はないかというのは」
「そうだね、騎士学校をトップクラスの成績で卒業し、その過程で任務をこなし、人民にユニス君の存在を刻み込めば、召喚者の立場工場に繋がる」
「私は反対です」
ユニスは知らなかった世界の真実に対して、考えていると、エザトリーは椅子を蹴っ飛ばし、立ち上がった。
「エザトリー君、座っていなさい」
「いいえ、これは黙っていられません。私の妹をそんな危険な事に巻き込めというんですか、親があんな屑でいままで立っていた地面が崩れるようなことが起こったというのに顔も知らない奴のために頑張る義理はない」
「それは問題ねーじゃないか」
憤るエザトリーに反して、デランドは落ち着き払った様子でそう言った。
「そのために俺がいるどんな危険だって俺が守るし、自分自身も守れるように教育もしてやるよ、それだけの素質がご主人様にはある」
「話に割り込むな、異世界人如きが」
「おー怖、それじゃー証明してみるか、少なくとも、おめー程度の実力なら完膚なきまでに叩きのせるけど」
「なんだと、、、、、、」
バチバチと二人の視線が交錯する。
「はいはい、二人とも、そこまでだね、、、、とは言え、私もデランド君の実力も気になっていることだし、うん、二人の決闘を許可しようね」
、、、、、どうやら世界というのはこちらの考えがまとまるまで待ってはくれないみたいとユニスは勝手に決まっていく状況に対して、しみじみと感じた。