5 公私
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ユニスが目を覚ますと、白い天井が見えた。
(牢屋ではなさそうですわね)
そこは牢屋とは違い、窓がなく、光源は天井からの鈍い光のみであるため、圧迫感はあるが、清潔な部屋であった。
ユニスは体を起こそうとするが、左側へと倒れた、原因とはいうと左腕がないからだ。
(段々と思い出してきましたわ。召喚した人に後を頼んで、気を失って)
「やっと、目を覚ましたか」
ユニスが思い出すのと起き上がるのに四苦八苦している横で聞き覚えのある、ユニスが召喚したデランドの姿があった。
「あなたは」
「おいおい、仮にも俺のご主人様があなたなんて堅苦しい呼び方をするなよ、あなたが名付けたデランドと呼び捨てで頼むぜ」
言葉遣いは適当だが、口調は紳士的にデランドはユニスにそう返した。
「待ってろ、今、お前の兄貴が来るからよ、無理に起きるんじゃねーぞ」
と言い、デランドは数歩ベッドの横を歩こうとするが
ドカン!
唐突に扉が壊されんばかりに開け放たれ、エザトリーがユニスの元へ突進し、
抱きしめた。デランドを横に蹴飛ばして、
「目を覚まして、良かった」
感極まっているが、ユニスはあまりの愛に胸を圧し潰され、呼吸ができていない。
(ちょっと、くるsっしいい)
あまりの力に、タップすることさえできないユニスを助けたのは、
「ちょっと、そのままだとご主人様が潰れるぜ」
と身体強化も使っているエザトリーをデランドが簡単に引き剝がした。
「ゲホゲホ」
「ユニス、すまない」
吊り下げられているエザトリーはやっとユニスの苦し気な様子が目に入ったのか、すまなさそうにしていた。
「ほんとだぜ、ご主人様が圧死したらどうしてくれるんだ」
「あーそれについてはすまなかったとも、しかし、いい加減におろせ」
「病人に乱暴するような奴の首を外すわけにはいかねぇーな、それに俺に謝罪はねぇーのか、背中に足のスタンプがついてんだが」
「心配のあまり突撃してしまったのだ。それにユニスの事をご主人様などど気持ち悪い呼び方で呼ぶな」
「なんだよ、俺は敬って呼んでいるんだぜ」
「私はそれを認めていない」
「関係ないね」
「「あ゛」」
二人の言い争いは至近距離でのにらみ合いへと発展した。
(相変わらずエザトリーは首根っこが掴まれたシュールな状況のままだが)
「あーそろそろいいかね」
トントンと
扉にもたれかかった髭が立派なおじさんの一言がにらみ合っていた二人を冷静にさせた。
「デランド君、エザトリー君には後で重々叱っておくから、離してやってくれまいか、エザトリー君もいきなり職務放棄して、走り出すんじゃない、周囲に怪しまれるではないか」
「「分かりました」ったぜ」
その言葉に両者は渋々にらみ合いをやめ、距離を取った。
「ユニス君も色々と混乱しているとは思うので、全てを説明させてくれないか」
「それは私からもお願いしますわ、その前に1つだけ、あなたのお名前をお教え願いますか?」
「おーそうだったね、これは失敬」
そうして、居ずまいを正して、
「私の名は騎士団、騎士団長 ファウスト~レナデと申します、よろしくお願いする」
とそう名乗ったのだった。