3 攻守
その振り下ろされた剣はユニスの魔封じの首輪を切断し、返す刀で両手首の輪も破壊した。
「お兄様、何て事を!これは私の悪魔が暴走しないようにお父様から絶対に外すなと言われているものですのに」
エザトリーはユニスのそんな疑問には答えず、ユニスの手に何か掴ませた。
「いいか、よく聞け、お前はん!」
と言いかけた時、エザトリーはユニスの体を床に無理やり倒した直後数十の水のビーム降り注ぎ、その一つがエザトリーの右肩を貫いた、
「お兄様!」
「大丈夫だ」
「驚いた」
それはエザトリーが破壊した天井から現れたそれはたくさんの私兵を連れたユニスの父の姿だった、エザトリーの体を貫いた水の残りであろう水の塊が周囲に十個程浮かんでいた。
「流石史上最年少騎士団入団した自慢の息子だ、こんなにも速く駆けつけるとはな。」
「当り前です、たった一人の妹ですよ」
「それ故に残念だ、その後ろの悪魔をかばいさえしなければ、お前は無傷ですんだものを」
ユニスはその言葉を聞き、ようやく分かった、あの攻撃はお兄様を狙ったものではなく、私を打ち抜くためであったと、
(そうか、私はもういらない子なんだ、それが父の家のためなら)
「ユニス!」
ユニスが父の沙汰を当然のように受けようと思った時、エザトリーの声が響き渡った。
「お前が何を考えているかは分からないが、敢えて言うぞ」
エザトリーは力のこもらない右手を床につきながら、
「お前は間違っている。お前は優しいから今まで育ててくれた親の言う事にはすべて従う、それが正しいと思うだろうが、
誰かの言う事だけ聞くなんてそこらへんの石ころにでもできる。生きるべきなんだお前にはそれだけの価値がある。兄を信じろ」
「話は終わりか」
「あー終わりましたよ。よく長々と待っていただけましたね」
「なあに、元とはいえ、息子と娘だ、最後の語らいくらい待ってやるさ」
「ありがとうございます。おかげで、この術が完成しました」
最後の線をひくとエザトリーの右手は血で魔法陣を描き終えた。
「閉じろ」
そうすると、ユニスの周囲にドンと氷の壁が現れ囲い込んだ。
「分からんな、ここまでの戦闘、右肩の傷、そして、後ろの悪魔を囲った氷の維持の諸々の魔力消費は限界に近いはず、元にもう氷の虚像を張る余裕もないようだが、苦しいだろうに自分だけなら逃げられるだろうに、」
「分からないですか、あなたにもそれを知る機会はいくらでもあったでしょうに」
エザトリーは霞む目を見開きながら、剣先を上に向けた。
「背中に妹がいるなら、例え百万の兵であっても倒す、お兄ちゃんですからね」
「引き返すなら今だぞ」
「あんたがな」
そして、戦闘が始まる誰もがそう思ったとき、作られたばかりの氷の牢獄、炎系統の術であっても簡単には破壊できない、(常にエザトリーが維持に魔力を注いでいるため)ものがパリンとガラス細工のように破壊された。