2 兄妹
そこには窓はなく、天井と壁を頑丈な退魔の壁で覆われていた。暗く、石壁に覆われた様子は特定の儀と大して変わらないように見えた。異なる点と言えば、部屋にはユニス一人であり、正面には鉄格子がはめられ、首と手首には魔封じの輪がつけられていることぐらいである。
「まさか、こんな事になるなんて」
ユニスのその独り言は牢屋の中を虚しく響いた。
特定の儀での水晶の力の現れ方は基本的に赤、黄、青、緑の色で現れ、それぞれの人の個性により、この四大色が紫や桃等の色に分かれるのだ。しかし、これには例外があり、力の現れで色ではなく、形になるパターンもあるのだ。
「家庭教師からは力が形で現れる者達は悪魔憑きであり、悪魔を取り除いた上で、平民として生きる事が決まってしまうとは聞いていたけれど」
(まさか、自分がその悪魔憑きになるなんて想像もしていませんでしたわ)
ユニスは思い浮かべる今までの勉学、魔力操作の日々、厳しく叱咤される事もあったけれど貴族の義務を果たすためにこそ力があるそう教えられてきたから頑張ってこれたのだ。
(平民はどんな生活をするんでしょうか)
仕事は?食べ物は?服は?どんな人がいる?分からないことだらけですわ。本当にどうすればいいんでしょう?
ユニスはこれからの人生に不安を覚えながら、天井を見上げた。その見つめた天井が
みるみるうちに白くなり、ガシャンと音を立てて、崩れ落ちて来た。
「何事ですの!」
思わず、立ち上がるユニス、前方にはもうもうと土煙を上がっている。
ヌンとその煙をかき分けるように剣を持った人物が出てきた。
背格好はユニスの頭一つ分大きく、髪はキラキラと光る青白色な
「お兄様ではないですか」
ダイナミックに牢屋に侵入したのは現在騎士団異例の最年少にて所属しているユニスの3つ上の兄エザトリーであった。
こうなった今ではユニスとの優劣ははっきりついているエリート中のエリートだ。
「お兄様一体どうしたんですの。確か、今任務中で戻れないはずでは」
ユニスのそんな疑問に兄エザトリーは無言でずんずん進むとユニスを壁へと押し付けた。
「え、何故このような」
「ユニス、時間がないから手早く済ます」
エザトリーはそのまま剣を持ち上げ、ユニスの首目掛けて、振り下ろした。