1 禍福
私ユニスは水の作成と操作に秀でた力を多く有するフォウンタイン家に生まれた。水という生命や産業活動に必要不可欠な能力のため国からの膨大な援助や地位を確立し、公爵である事を許されている言うなればエリート一族となっております。
この家に生まれた時点で歴史、礼儀作法、乗馬、マナー、周辺諸国の関係との関係、家の業務エトセトラと様々な教育を施されていた。
そんな毎日を過ごしていてなんとなく、このまま大人になって、他家へと婚約が進み、子どもを産んで一生を過ごしていくと思っていた。
あの瞬間までは
あくる日、その日はフォウンタイン家ご息女ユニス12歳の誕生日の夜であった。
「お嬢様、こちらです」
「分かったわ」
そこには、腰までと長く伸びた水色の髪を揺らし、くっきりと意思の強そうな目を開きながら、ある部屋へと向かっていた。
「お嬢様、お疲れではございませんか、やはり抱っこした方が、
「爺、赤ん坊ではないのですから、わたくしは自分の足で歩けますわ」
このお嬢様と老執事は、国民の全員が12歳の誕生日に受ける特定の儀を行う部屋へと向かっているのだ。
これが平民の場合には建国記念日のその年に12となる少年少女達を村や町で受けさせるのだが、貴族だけが例外として、12歳の誕生日の前日に内々で家の者だけで力の種類を確認し、次の日パーティーでの親族一同が集まる場にて発表する。これが社交界のお披露目も兼ねており、これをきっかけに貴族の輪へと認知されるのだ。
そんなこんなで、長く暗い廊下を30分程老執事とお嬢様が歩いていけば、目の前に荘厳な扉の前へと辿り着いた。
「ビル」
「はい、お嬢様」
お嬢様の一声で老執事はその扉を開けた。そこに広がっていたのはお嬢様の両親にその側に護衛である剣を刷いた青年が二人。
(初めて、入りましたけど意外と殺風景な光景ですわね)
ユニスは周りのランプで照らされた薄暗い石壁に覆われた部屋を見渡し、
(あれを除いては)
ユニスは部屋の中心にある無色透明の水晶を眺めた。その水晶は仄暗い光を照り返しながら、中心のいままで触れてきた力を表すように青色に光が揺らめいている。
「うむ、来たか」
「はい、ただいま、参りました」
ユニスはドレスを両手でつまみ、頭を下げた。
「良い、頭を上げよ」
「そうよ、今日は記念すべきあなたの力が分かる日なのだから」
「はい、分かりました」
ユニスは頭を上げて、真剣ながら、喜びを隠し切れない表情をさらけ出した。
「いろいろの前口上はあったが、ユニスも待ちきれないようなので、さっそく始めよう」
そう言うと、ユニスの父はコホンと咳き込み、水晶を手で指し示した。
「ユニス=フォウンタイン」
「はい」
「自分の力を流し込むイメージを持ちながらこの特儀の水晶に触りなさい。」
「はい」
ユニスは神妙な面持ちで、水晶に手を触れた。頭の中で体に常に循環する力をちょっとずつ流し込むイメージする。
(やはり、血筋的に水属性かしら、もし戦闘的な力なら、騎士学校に行けないかお父様に頼んでみよう。それでも、どんな力でも)
さらに力を込めながら
(フォウンタイン家の名に恥じぬ使い方をしましょう)
そうすると水晶で揺らめいていた青色が消え、白い輪郭が現れ、形を成した。ぼやけているが何か器を持った人型が屈む姿が映し出された。
「なんとこれは」
その様子をお父様は信じられない物を見るように水晶を凝視し、お母様は口元を両手で覆い壁へもたれかかった。
そして、私の未来予想図が大きく、変わった事を思い知らされた。