決して敵わぬ恋敵
ルカが死んだ。いや、この場合私が殺したというほうが正しいのかもしれない。正直目障りだった。彼の愛は、妻である私には決して届くことはなく、ルカにそのすべてが注がれていた。だから殺してやった。この泥棒猫を。ルカの腸は破かれ、見るも無惨な状態だ。私は笑みを浮かべる。この女を殺すことは容易だった。何しろ抵抗もしないし声もあげなかったからだ。ルカは本当に隙だらけだった。しかしもちろん、彼には私がこの女を殺したことは気づかれてしまうだろう。もうすぐ彼が帰ってくるのだから。けれども、私は罰を受ける気はない。きっと彼を懐柔してみせる。さぁ、彼はこの惨状を見た時どのような顔をするだろうか。絶望するだろうか。激昂するだろうか。いや、私をよりいっそう愛しく思うに違いない。
しかしながら、私の想いは叶わなかった。
彼はミクという新しい女を連れて帰ってきた。
それは、ルカと同じ素材でできた、「初音ミク」という抱き枕だった。
叙述トリックの短編です。お楽しみいただけましたのなら幸いです。