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4:彼女が人の子だと気づいてしまった彼は、自身の中途半端な人の心を呪った。

「嗚呼、神よ、赦したまえ」

 少女はハルバードを振りかざした。

 いくつもの首が宙を舞う。鮮血が噴水のように吹き出し、ベールから顔を出す彼女のミモザ色の髪は赤く染まっていく。

 男は息を呑んだ。叙事詩を読んでいるかのような錯覚に陥ったからだ。それほど目の前で繰り広げられる出来事は異常。

 天使のような柔らかな肌と幼げな容姿。清純の象徴である修道服。生と死を分かつ荒廃した戦場において少女の存在そのものが歪で神秘的だった。

 少女は自身の身長よりも長いその武器を地面に引きずりながら甲冑を身につけた大の男たちに近づく。斧のように一際刃が大きく、重量のあるそれを、齢十五にも満たぬ少女が使うにはあまりにも不自然。

「迷える子羊に安らかな死と救いを」

 しかし、獣は自身の牙の使い方を分かっていた。器用にも自分の体を軸にハルバードを重量で振り回し、貪るように、無慈悲に、刃は獲物を襲う。時にはハルバードを軸に自身の体を振り回し、敵の斬撃を躱す。躱して、また一人、仕留める。

 狙う場所は決まって首だった。相手の息の根を止めるようにがぶりと食い千切る。

 腹をすかせた獣だ。男は確信する。

 祈る言葉とは裏腹に獣は口元に弧を描き、目の前に広がる景色を悦び、吠える。甲冑をまとった男たちがいたいけな草食動物に見えてしまうのが滑稽だ。

 唸り声が耳に入らなくなった頃、牙は影を潜め、少女は男のもとにやって来た。

「神父様、ただいま終わりました」

 光のない琥珀の瞳は雫を零しながら歪んで嗤う。それを見て、男は痛感した。

 自分にはこの獣を飼い慣らすことは……この少女に手を差し伸べることは、できない。

 彼女が人の子だと気づいてしまった彼は、自身の中途半端な人の心を呪った。



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