1:その日、星屑が瞬く夜の日、俺は独りぼっちの魔女と友だちになった。
森の奥には人食い魔女がいる。
幼い頃から村の大人たちに言われていたおとぎ話。でも、そのおとぎ話は掟のような、森に行ってはいけない約束事として伝えられていた。だから、今までずっと疑うことなく、森に行くのを避けていた。
だけど、ある晩、聞こえたのだ。森の奥で女の子の歌声が、はっきりと。
森は危険だから助けに行かなくちゃ?
違う。
大人たちにばれる前に連れ戻さなきゃ?
違う。
俺はただその歌声に惹かれて、気になって、魔法がかけられたように、歌声がする方へ、森の奥へと進んでいった。
そして、木々が密集した暗がりの先で、見つけたのだ。
星々が散りばめられた夜空、そんな夜空を鏡のように反射した湖の上、なぜか女の子が踊っていた。
「夜に星を注ぎましょう」
彼女が鈴のような凛とした声で歌うと湖上の夜にいくつもの星が眩い光を放って、流れて、落ちていく。
「光があれば独りぼっちの夜も怖くはないわ」
夜を纏ったような黒い髪は足元まで伸びているというのに、彼女が跳ねるとふわりと羽のように軽やかに舞う。
「今宵も星の舞踏会で――」
そして、月明りの光を宿した彼女の白銀の瞳と目が合った。その瞳に捉えられた俺は息をするのを忘れ、ただ見入ってしまう。
強い夜の風が吹いた。強くて冷たいはずなのに、その風は優しく俺の頬を撫でた。
「さあ、」
思わず閉じていた瞼を開けると、彼女は俺の前にいて、手を差し伸べ、微笑んでいた。
「――私と一緒に踊りましょう?」
その日、星屑が瞬く夜の日、俺は独りぼっちの魔女と友だちになった。