7 真っ黒と真っ白
神官様たくさん出てきますが、もうそろそろ他の方々も出したいと思います。
あんなおぞましい食材が入っていると知っていたら最初から口にしなかったさと神官様は悔しげだ。
あの後、魔物を食材として口にしていたと知った神官様は、私と同じく気絶して、目が覚めたら自室の寝台の上だったという。
女神さまを信仰している神官達は不浄を嫌う。
本来であれば視界に魔物を入れただけで不浄だと騒ぎまくる神官の一人であった神官様が、その不浄を体内に取り込んでしまったと青ざめるのは正常な反応といえよう。
神官様は3日3晩寝込んだ後決意したのだそうだ。
「取り込んでしまった不浄は体外に排出されることはありませんし、知らなかったとはいえ食してしまったという事実を取り消せるわけではありません。女神さまは見ておられますからね。私はそこで気づいたわけです。体内に取り入れてしまった不浄を上回る、聖なる力を自身に取り込み不浄を浄化すれば良いわけだと。そこで、私は決意しました、上位の神官になろうと!!私は必死に勉強し聖なる力を得てきました。聖女さまが召喚された際に、サポート役に抜擢されるほどですから、どうです?すごいでしょう??」
神官様は天才型ではなく努力型だったようだ。
なんでも涼しい顔をして何故こんなことも出来ないのですか?という表情でやってしまっていたから、天才って羨ましいなぁなんて思っていたのだが、そんなことはなかったらしい。
思っていた以上に表情も豊かで話もなかなかに面白いし、今日だけで好感度うなぎ上りだ。
なんなら、「どうです?すごいでしょう??」と鼻高々に私に問う神官様は、褒めてとせがむ幼子のようで可愛らしいなとさえ感じ始めている。
「さて、それともう1つ私は決意したのです。……………あの魔の料理による被害者を1人でも減らそうと。そして、被害者に救いを与えようと!!」
「………救いですか?」
「ええ。救いです。貴方は勇者ですので何ともないようですが、普通の人間は、不浄を体内に取り込みすぎると体調を崩すことが多いのです。殆ど見たことはありませんが、限界まで黒く染まってしまうと私達でも成すすべがありません。」
この辺が真っ黒になるんですよと胸の辺りを掌で示した神官様は、不浄が溜まってしまった方々に聖なる力を与え緩和することも我々の仕事なのですと教えてくれた。
「私には不浄はたまっていないのですか?」
毎日毎食討伐した魔物を食しているのだが………と心配になって問う私に、またモノクルの位置を直し神官様は安心させるように微笑を向ける。
「どうやら勇者には不浄を浄化する力が備わっているのでしょうね、真っ白ですよ。」
不浄が溜まりすぎてしまうと体調を崩すなんて話、始めて知った。
勇者や騎士たちは魔物を倒すことを職としているから、一般人よりも不浄への耐性があるのだろう。
「………………しかし、本当にあの男は謎なのです。だから、私も警戒せざるを得ないというか……。」
「謎ですか?」
神妙な顔をして、またもやモノクルに触れようと指先を目元に持っていた神官様にそう尋ねる。
「ええ、あいつはもう真っ黒なんですよ。」
なのに、一切不調が現れていないのだと神官様はつぶやいた。
「………………あれはいつ死んでもおかしくない。」
よろしければ評価をお願い致します。
次回も明日21時更新です。
次回もよろしくお願いします。