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其々の思いと覚悟

 最終日の狙撃大会、その意図を理解しかねていた渋谷、

指令のクロウに直に問うと現場の様子を注視して見ろと助言を受ける。


 言われるままに数日注視して隊員達を見守ると面白い行動が見えた!


 隊員の中で射撃が得意なタイプと、理論を立てて助言を出すタイプ、

射撃より、銃の部位特徴に興味があるマニアタイプ、

 全員が射撃に夢中になっているのではなく、

仲間を補助する事に楽しみを覚えている根っからの支援タイプの隊員が!


 「プロには各部門のマイスターが必要だ!

 独りでどれだけ努力しても1,500mの壁は中々突破出来ない物だ。」


 最新の狙撃銃でも射程距離は1,000m、

それを改造して自分に合った銃にするには、部品の制作から弾薬の調合、

色々なプロの経験と技が長距離を可能にして行く。


 その中でもスポッターと呼ばれる観測手の力は絶対だ!

温度湿度、風向きや標高など、弾道に影響が考えられる全ての予測をして、

標的までの計算を行う事で2,000m以上の人物(ターゲット)を狙える。


「2,000m!」

「その位は可能だろう(笑) 電子機器も高性能になったからな(笑)」

「2,000・・・」


 スポッターはスナイパーより重要で部隊には欠かせない貴重な存在、

命令で出来る領域ではない素質が重要だとして、

その素質を見極める為にこの狙撃大会を行なっている。


「狙撃手の訓練ではなく、観測手の発掘!?」


「狙撃手なんか時期にロボットが人間を超える時代が来る!

重要なのは経験値と的確な判断が行える人間だよ!」


 無人機や精密ミサイルなどで戦争の形が変わると言うクロウ、

その時代にいち早く対応するには知識力と経験値が大事で、

観測手などの人材を自衛隊は備えるべきだと論じた。


 「最前線に銃を持って突撃する時代は終わる!

 次の戦争は物量と経験値の戦いだ!」


「物量と経験値・・・」


 「そうだ! 年々高額になる軍事費、その大半は装備の高騰だ!

 然し敵国はどうだ? 

 安価な武器を海外に売り外貨を稼いで軍を維持している。」


 どんなに高性能なミサイルでも、装備以上の敵には勝てない!

数千万の敵戦闘機を10倍以上価格(する)ミサイルで対応出来るほど

国力に差があるとは思えない!


 経済力が均衡もしくは逆転されれば破綻して負けるのは浪費国の方だと

クロウが渋谷に説くと

「それは大戦で経験している筈なんですがね・・・」

 「そうなのか?」

「島国が連合軍に物量で敵う筈が無かった・・・」

 「確かにな・・・お前達も再学習が必要なのかもな(笑)」

「・・・」


「ここは・・・フリーダムはどうなんです?」

 傭兵と言っても民間企業、米国や露帝国の支援があって

成り立っていると思う渋谷にクロウが笑う


 「戦争に勝つ為に必要なモノは何だと思う(笑)」

「必要なモノ?」


 単純に考えれば戦力だ! 然し今の言葉を聞いていれば経済力も必要だ!

「経済力も必要ですね・・・」

 「難しく考えるな(笑) 必要なのは1番だ!」

「1番?」


 軍事力も経済力も関係無く、戦争には全てのモノが必要だと言う

全て・・・1番なら誰も逆らわない、誰も従うしかない。


 「新兵器を開発する技術力、その力を各国が欲しがる、

 当然拡散を恐れる国も現れる、そいつらはどうすると思う?」


「武力で阻止しようとする?」

 「(笑) 我々より戦力が劣るのにか?(笑)」


 考えられない、答えが思い浮かばない渋谷にクロウが答える!

 「我々に取り入ろうとするんだよ! 1番気に入られる為にな♪」

「取り入る・・・1番!」


 「その為に、基地を空け渡す、 我々を自治集団と認める!

 自国を守る為にな(笑)」


「自治集団?」


 来年早々にフリーダムは独立自治集団として米国から自立すると言う!

「まさか!」

 「我々をいつまでも囲って置けないのだよ米国もなぁ」


 対C国への対応ではフリーダムと米国では真逆の考えであり、

今回の沖縄基地の譲渡だってC国の勇み足が無ければ県に返還する筈だった。


 そして最大の相違はこの場所に対しての考えだった。

米国も重要な場所として認識しているが、

日◯に配慮して島の完全占有は考えていない。


 然しフリーダムは違う、

政府の無駄な予算配分やC国やK国の工作員や諜報員を野放しするつもりはない!

簡単に説明するとチャンスを見て、再占領を考えていた!


「な! ここは日◯領土だぞ!」

 「分かっている! だから我々が統治管理するのだ!」

「どの様に考えれば・・・そんな答えになるのだ!(怒)」

 「(笑)」

 

 これ以上はいくら渋谷でもリーク出来ないと、

笑いながらクロウが話を終了させた・・・。


 口止めされていないとは言え、気安く他言出来る内容では無かった、

然しここに参加している自衛官、特に今回選んだ隊長5人は全員、

渋谷の戦える自衛隊思想に共感している同胞達だった。


 色々な目がある為、秘匿として時には部下達の前で批判したり、

ある程度の距離感を装い自衛隊改革の時までと共有の目的として務めていた。


 

「沖縄!再占領だと!」

「「馬鹿! 声が大きいぞ!」」


 敵中で話す内容ではない事は渋谷も理解していた、

然し内容が内容なだけにこの先の動向を、意見を聞きたかった・・・


「信憑性が分からん!」

「これも訓練の内なのではないのか?」

「機密情報に対しての行動訓練とかなぁ」


 現実逃避したくなる気分も分かる、渋谷も同じ感情だったから・・・

「もし、話が本当だとしたら?」

「・・・米露が承認するのだろう?」

「あり得るのか? 米露だぞ?」


「「「「「・・・」」」」」


 太平洋と言う海域で、

米国と露帝国が一線の緩衝材としてフリーダムを承認する行動はあり得ると結論、

そうなると再占領の話も真実味が出て来た・・・


「現政権内では行動は起こさないだろう?」

「そうだな、起こすなら抑々こんな合同訓練をしないだろう?」


「そうなると・・・次の政権か?」

「先月総理が変わったばかりだぞ?」


 ここで渋谷(じぶん)の考えを伝える、

クロウ達の話し方、どう見ても友好的に関係を維持させようと感じる事が出来る。


 そこから、行動が起こるとしたら政権交代、

つまり野党が政権を獲った時ではないかと伝える・・・。


「「「「「それだ!」」」」」


 当日の風呂場での言葉を思い出していた参加者達、

あの時の、敵国批判では無く何故政府批判に挿げ替わったのか?

敵国に内通、協力している議員達がいる! その言葉が脳裏から湧き出していた!


「次、選挙いつだ?!」

「参議院は7月に終わったばかりだろう?」


「衆議院選挙だろう? 動くとしたら」


 幹部達のもフリーダムの行動が見えて来た!

「参議院の大敗って・・・」

「あぁ、沖縄での射殺試験の1週間前だ!」


「って事は・・・」

「待て!待て!待て! まだ負けるとは限らないだろう?」

「そ! そうだ!自◯党政権が続く事だって・・・」


 日に日に大きくなる政府批判、

その要因はここ沖縄(フリーダム)が原因でもある。


「どこまで・・・話が進んでいるんだ?」

「少なくとも米露は承諾しているんだろう?」


 再び渋谷が口を開く!

「あの時の言葉・・・覚えているか?」

「「「「「あの時の?」」」」」


「政権が変わり自分達の思想理念と違った政権の命令を

自分達は承諾出来るのか?」


「まじかよぉ」

「本当に考えんといかんかぁ?」

「国家を守るか? 国民を守るか?」

「C国の植民地か? 従えんぞ!そんな命令!」


「俺達でクーデターでも起こせって言うのか?フリーダムは?」


「違うだろう?」


「「何で言い切れる?」」


「訓練だ!」


「「「訓練?」」」


「「「「「あ!」」」」」


 今回の訓練、基礎体力と精神力の鍛錬、

それから行われたのはひたすら防衛の為、後方支援の為の訓練だった。


「最前線で戦うのは俺達じゃない」

「自衛隊に向いているのは後方支援・・・」


「でもよ、どうやって支援すりゃいいんだよ?」

「確かにな・・・」


「「「「「・・・」」」」」


 結局結論が出なかった、曖昧な情報故、

各々の胸に留めて外に漏らさない事を確認して相手(フリーダム)の出方を注視する事にした。


 

 最終日、

狙撃大会は申告制で参加者は距離を指定してその距離で射撃を行い、

距離と精度の総合得点を競う。


 各部小隊から2〜3名が出場、各々自慢のライフルを所持して距離を申告し、

競技順番を待っていた。


 「12名ですか?」

「はい・・・」

 「1,500m以上が現れるといいですね♪♪」

「流石にそこまでは・・・」


 「仲間を信じなさい! (笑)」


 クロウの言葉・・・なぜか重く感じていた。



 結果は、1,200mでピンポイントを行った隊員が2名、

同点と言う事で延長戦を期待したが、教官の言葉が冷たく全隊員達に刺さった!


「実戦で、次は無い! 悔いを残すや! 

たら、ればは、死人にはないぞ!」


 お祭りと勘違いしていた自衛官達、

どんな環境下でも実戦下である事を忘れていた・・・


「優勝商品として、勝者2名には、今使用しているライフルを進呈する。」

「「え!」」


 「次は的ではない、人の頭を狙う覚悟で訓練を続ける様に」

「はい!」

「ありがとうございます。」


 最後に締めとして教官が説いた!


 初めて教官の任務に当たったが最後まで怪我なく付いて来て嬉しい、

自衛隊は温室育ちと言う者も耳にしているが、

外界を知る根性と精神がある事が分かった事が嬉しい。


「俺達は傭兵だ、国軍とは違う、

汚れ仕事も雑用も自分の命も自分達で判断する・・・だから悔いはない。」


「お前達は、戦いに負ける事が許されない存在だ!

負けた後の事を考えろ! 全てを失うんだぞ! 

家族や恋人・・・そして仲間も!」


「俺達は納得のいかない任務は拒出来るが、お前達は国軍、

国の命令には従わなければならない、だからこそ絶対に負けるな!」


 どんな不合理な条件下でも戦う以上、

背負う物が大きいのだから絶対に負けるな!っと教官が熱く説いた!


「窮地に陥ったらいつでも言ってこい! 同じ飯を喰った仲だ!」


「ただ・・・戦場で、敵として対峙した時は躊躇するな! 

俺達も迷わず殺すから・・・楽しみにしている。」


 教官の最後の言葉と同時に、殺気がグラウンド全体を覆い尽くす!

100名以上いる自衛官全員が、即座に理解して恐怖した!

100名全員で襲い掛かっても無駄だと、一瞬で殺されるだけだと・・・・


「これほど違うのか?」

「同じ・・・生き物じゃない・・・」

「冗談だろう? 本当に人なのか?」


 「(笑) 武器も所持していない独りにそこまで怯えるか?」


 クロウが自衛官達の不甲斐なさに呆れ笑う!

 「いいか、戦争なんだ! 綺麗事ではない! 理想論なんか通じないぞ!

 生きるか?死ぬか? 二択だ!」


 生きたかったら考えろ! そうすれば生き残れるか?

自分達が死んだら残されたモノ達の未来を考えろ!

死ねない以上選べる選択肢は何かを?

その最善の選択を考える事が今回の訓練の成果だとクロウが説いて終わった。


 送別会には約束通り美味い料理が沢山用意されていた。

肉や魚、そして米も、隊員達は傭兵達と共に喜びを分かち合い楽しんでいた。


 その光景を見つつ、渋谷達上官は同じ事を思っていた・・・


「国がどうなろうが関係ない!」

「俺達が、家族、そして仲間を守る為に行動する」


 生き抜く為に、守り続ける為に・・・


もう1日だけ、

明日の0時も更新します。

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