お部屋完成! したらすぐに……。
「できたっ!」
勉強机を組み立て終わって、その他諸々、侑希ちゃんの荷物を部屋に詰め込んだ。中学校の制服が二つ並んでかかっている光景はかなり目に新しい。
「お姉ちゃん、疲れたぁ!」
侑希ちゃんは私の服の袖をつまんだ。
「疲れたねぇ侑希ちゃん」
「んーっ」
可愛くてたまらない妹の頭をなでなでする。
「私たち、ほんとに姉妹になったんだ」
二段ベッド、二つの勉強机、クローゼットの中の二人分の洋服。
元々私一人にしては広いお部屋だったけど、侑希ちゃんと二人となると、本当にこの子と暮らすために作られた部屋なんじゃないかと思うほどぴったりだった。
「ちょっとお休みする?」
私はベッドに座って隣をトントンする。
侑希ちゃんが隣に座って、隣から抱き締めて、そのまま後ろに倒れこんで、二人で……なんて妄想をしながら。
即座に飛んできて甘えるかと思いきや、侑希ちゃんは指をきゅっと咥えて悔しそうにこちらを見ていた。
「どうしたの?」
彼女は組み上がった机の方を見た。
「お姉ちゃんにぎゅーしたいけど、春休みの宿題しなきゃ……」
ぶわーっ! そうですよねー! だって侑希ちゃんですもんねー! 優等生ですもんねー! 私なんて宿題なんか意識の内にも入れてないのにー!
妹侑希ちゃんでも、宿題には勝てないのか……。
「そ、そうだねっ。今日の分終わらせよっか」
私は汗を隠しながら、彼女に笑顔を向けた。さすがにお姉ちゃんとしてのわきまえがある。
「終わったら、ぎゅーしていい?」
「いいよっ」
「やったぁ」
でも、お勉強ってなったら、私は妹でいた方がよさそう。だって侑希ちゃんの方が全然勉強できるんだもん。
「侑希ちゃん」
「んみゃ?」
私はベッドから勢いよく腰を浮かして、振り返りざまの侑希ちゃんをぎゅっと抱き締めた。
とろ、とろ、とろ、とろ、とろ、とろ、りんっ♪
大好きな沙希ちゃんの匂いがわたしを包み上げて、さっと離れた。
「お姉ちゃん、お勉強教えてっ」
沙希ちゃんはわたしの袖をちょこんとつまんで、綺麗な真ん丸の目でわたしを見つめた。
ぐっ。お、教えますともっ! 可愛い妹のお願いなら何でも。お勉強なら、お姉ちゃんできるっ!
「いいよ。沙希ちゃん。宿題持っておいで」
「うん」
わたしの勉強机に寄せられた二つのローラーチェアー。広げられた理科のノート。完全に動きが止まったシャープペンシル。それを力なく握る指。そのすぐ近くに埋められた可愛い妹の寝顔。
ね、寝ちゃったよ沙希ちゃんっ……。きっと、すごい疲れてたんだよね。
少しの間は一緒に勉強してたのに、気付いたらわたしの机にノートを広げたまんま眠ってしまっていた。
数学の答えを書ききって、自分のノートを閉じる。そうやって集中する矛先が無くなると、わたしの意識はもちろん……。
「沙ー希ちゃんっ」
わたしは愛しの妹の寝顔を眺めた。ものすごく柔らかそうな唇が少しだけ開いていて、その隙間から白い歯が覗いている。
胸の奥がどきどきし出す。
だ、だめだよっ。お姉ちゃんが妹に手を出すなんてっ……! 我慢我慢……。
でも、宿題終わったらぎゅーしてくれるって言ってたな。
だったらちょっとくらい、良いかな? 良いよね? ご褒美っ。
わたしは沙希ちゃんの身体を優しく包みながら、頭を優しくぽんぽんした。
とろ、とろ、とろ、とろ、とろ、とろ、りんっ♪
「えへへ~お姉ちゃ~んっ……」
「んー……」
夜まで一緒にお昼寝した。