暖かな日差しに目覚める者たち
冬から突然春になり、人やモンスターたちは驚いた。厳しい寒さから解放され、暖かな日差しを浴びに外へ出る者たち。人とモンスターは話し合った。どうして急にこんなにもこの世界がポカポカ陽気で満たされているのかを。そんな中ベルシーという人間の少女は彼女の家の中で、友達のモンスターであるカーヴァと話し合っていた。
「今日はシフ様のご機嫌がいいのかな?」
カーヴァは考えるように大きな手を組み肘をついた。
「さぁ、あのお方とは口を聴いたことがないから」
少々険しい顔つきにも見える。冬が苦手なモンスターであるカーヴァはシフという存在をあまりよく思っていないようだ。祠にも出向いたことがないという。そんな会話をしながら何気ない時間を過ごしていた二人のもとへ新たな友達が駆け足で扉をダンっと蹴って入ってくる。
「桜が咲いたぞ! 冬に桜だ! 花見をしよう!!」
狼女のウィリーだ。彼女が居るといつも賑やかになる。暑いのか大きなマフラーを脱ぎ捨ててその大きな口とギザギザの牙を露わにしてガハハと笑う。
「もう、ウィリー。行儀悪いわよ」
「そうそう。そういうところが女らしくないよね」
ベルシーの言葉ではなくカーヴァの何気ない一言に怒りを表した様子のウィリー。
「女らしさとはなんだ! 簡潔に言ってみろクソ野郎!」
苦笑いするカーヴァ。こんな仲でも彼らは良き友達である。何でも言い合える素敵な友達。
「桜は魔王シフの祠の近くにあった! さぁ行こう!!」
「……あのお方へ感謝を伝えに?」
「違う。酒を飲むためだ!」
カーヴァが嫌そうにしているのを見ていたベルシーがひとつの提案をした。
「シフ様を驚かすっていうのはどう?」
その提案を聞いて二人は顔を合わせてしばらく沈黙した。そしていたずらっ子のような笑みを浮かべる。それは決して悪意があるものではなく純粋なものであった。そして始まる作戦会議。果たしてどのようなドッキリがシフに待ち受けているのであろうか。