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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

クトゥルフTRPGセッション!!〜文字書き初心者のGMがセッション内容を書いてみた〜

作者: 紅葉 チョコ

※ほとんどシリアスはありません。

GMは表現力と文章力がありませんが、それでもよければどうぞ

  つい数時間前までは、何事もない日常で、ほんの少しの恐怖と刺激と楽しみを味わうためのイベントだと思っていた。



  高校三年生、受験が終わり、春休みに去年の夏に出来なかったことをやろうと決め、沢山遊ぶことになるのだろうと思っていた。



「夏といえばやっぱ肝試しでしょ!」

「今3月なんだけど……やるの?」

「最近出るって噂の廃病院見つけたんだよ。いつも通り白石と前川も誘って四人でやろうぜ!」

「………ちなみに拒否権は?」

「ない!!」



 この時に僕が強く、やめておこうと、別の日に変えようと、言っておけば。



「じゃあ、明日の夜10時にお前の家集合な!あ、他の二人には声かけておくから家で待機してていいぞ」

「はぁ……わかったよ。じゃあとりあえず懐中電灯と

 飲み物と何か持ち運びしやすいお菓子でも用意しておくよ」

「おう、任せた!じゃあまた明日!」



 こんなことにはならなかったのかもしれない。




 ―――――――――――――――――


「それで、改めて聞くけど一体何がどうなったら春休みに肝試しをするなんてことになるのかしら?」



  そこには、お世辞にも機嫌が良いとは言えない状態の女子生徒が男子生徒を睨みつけながら仁王立ちしていた。まるで彼女の後ろに般若が浮かんでいるようなほど怒気を孕んでいる。


 彼女の名前は白石 緑。学校では容姿端麗、文武両道の完璧超人である。なんでもそつなくこなし、常にトップクラスの成績を収める俗に言うエリートだ。あえて欠点を挙げるとするならば、彼女には普通の人には近寄りがたい、そんな雰囲気があるところぐらいだろうか。


 さて、そんな彼女に冷たい眼差しを向けられている男子生徒は……


「いや……その……寒い時期の肝試しも乙なもんかなぁ〜、なーんて……てへ?」

「ふふ、ふふふふふ……ねぇ北川」

「ひ……ハイナンデショウ、ミドリサン」

「歯……食いしばりなさい?」


 ……今現在、自分よりも小柄の少女にアッパーを食らい、踏みつけられているこの男子生徒の名前は北川 隆司。少しお調子者で、暴走しがちだけど、どこか人を惹きつける、明るいムードーメーカー的な存在の人だ。リーダーシップもあり、普段は兄貴分として頼れる人なのである。



「ごめんなさい!ありがとうございま……あ…なんでもないです!ごめんなさい!!」



 ………兄貴分として頼れる人なのである。決して変態とかドMだとかそういう属性は持ち合わせていない……はずだと思う、多分。


「ははは……二人はいつも元気だよね……。ねぇ南森くん、どうしよっか。」

「そうだねぇ……まぁ落ち着くまで待ってようか。ちょうどお菓子もあるし。あ、前川さんもいる?」

「え?いいの?それじゃあいただこうかな。お腹も少し空いてきたし」


 少し離れた場所でギャーギャーと騒いでいる二人を眺めながらお菓子を食べる。どうやらこの茶番はもう少し長引きそうだ。


 僕の名前は南森 栄ニ。争い事や運動は苦手だけど、お菓子と料理を作ることや裁縫などといった、家事が少しだけできる。成績は白石さんと一緒ぐらいなんだけど、運動能力はあんまりない、インドアなタイプ。

 ちなみに今回作ってきたお菓子はクッキーとギモーヴです。


 女子の方の名前は前川 愛美。僕みたいな性格とは違い、北川のような活発さをもつ少女。勉強はあまり得意ではないけど、運動神経は抜群で、陸上部のエースとして活躍していたらしい。


「お前ら……眺めてないで助けるという選択肢はないのかよ……」

「「ない」」

「ねぇ北川くん。まだ()()()()は終わってないのだけれど、どこに行こうというのかしら?」

「あ、その違うんです!!あ、あ、やめて!おいお前ら絶対恨むからなぁぁぁぁ!!!!」

「いやぁ……だって……ねぇ?」

「自業自得だもんね。あ、このクッキーおいしい」



  閑話休題



「さて、よく集まってくれた諸君!今回、この総隊長の俺様が率いる[ざ・幼馴染★ぱーちぃ]は、肝試し作戦を決行する!意義も反対も認めんから覚悟しておけ!」


 そう高らかに宣言するのは先程までボッコボコにされてダウンしていた北川だった。どうやら無事復活を果たしたらしい。


「たいちょー、私今日用事があるんだけどー」

「ふっふっふ、残念だったな前川隊員!今回皆の家族には事前に用事がないかチェックしてあるのだよ!」

「チッ……なんでこいつこういう時だけ抜け目ないのかしらね。いっそ本気で潰してあげようかしら」

「ひ……い、いや!屈しない!俺は屈しないぞ!!暴力になんか、絶対負けないんだからね!!」


 なんか鼻息荒くしてすっごいにやけた表情を浮かべてるんだけど……大丈夫かなこれ。


「ねぇ、茶番はいいから早く話進めようよ。僕、あんまり怖いのは嫌だからなるべく早く行きたいんだけど」


 現在の時刻は十一時前。この時間帯はどこも人通りが少なく、たまに通るのは犬の散歩をしている老人か帰りが遅い社畜ぐらいだろう。こんな時間に外を出歩きたいとはあまり思わない。

 僕たちは高校を卒業したとはいえ、まだ大学生ではないので警察に補導される可能性もあるんだけど、みんなはあまり深く考えていないみたいだ。


「おっと、そうだな。じゃあもったいぶってないで早速行きますか。目的地は今話題の心霊スポット、大原病院だ!肝試しや度胸試しなんかで行った人が行方不明になった、なーんて話もあるからきをつけるよーに!ではしゅっぱーつ!!」


 僕たちは病院へ向かって歩き始めた。しかし、三名ほどは重い足取りだけど…。

 多分この時の北川を除く三人は「(ああ……こいつ一回締め上げてやろうかな…)」という思いで一致していたと思う。


 それはそうだ、一体誰が行方不明になっている人が出ている廃病院に行きたいと思うのだろう。


 僕の家から徒歩一時間のところ。明かりは月明かりや少しばかりの星のみで、民家も人気もない場所に()()は佇んでいた。


 その廃病院は、今にも崩れ落ちそうなほど、ボロボロに退廃していた。雨風によって変色したコンクリートは所々にはヒビが入っており、窓ガラスは殆ど割れていた。周辺には鬱蒼とした森が広がっており、屋上の柵には見たこともないツルのような植物が複雑に絡まり、病院内に侵食するほど生えていた。


 これは……ちょっと予想外かな…。


「うわぁ……なんというか、不気味というか……あ、あそこに立ち入り禁止の看板があるよ」

「本当だ。あ、ちょっと、前川さん。あんまり先に行かないで、逸れるかもしれないから」

「ごめんごめん、ちょっと気になってさ。…ここに入るのかぁ……」

「………帰りたいわ、本当に」

「……提案しといてなんだけど……怖すぎるな、これ」

「あんたねぇ……ほら、さっさと行くわよ」


 僕たちは白石さんについていく形で廃病院に入った。



 そこはまるで外の世界とは別の異世界のような場所だった。入り口を入ってすぐの少し小さめのメインホールには、古ぼけていて、少しでも圧をかけたら壊れそうな錆びたパイプ椅子が並んでいた。受付カウンターには書類が散乱していて、数日前まで誰かがいたような形跡があった。そして、奥に続く廊下には扉が三つと二階への降りる階段と地下に降りる階段があった。



「えーっと…今回の目標は病院一周だから……早く済ませそうか、うん」

「そうね、じゃあ早速他の部屋に行きましょうか」


 こんなところ一分一秒でも長くいたくないもんね………ん?なにこれ?ノート?なんでこんなところに……。


「まってみんな。なんかここにノートがあるんだけど」

「お?南森、なんか面白いものでも見つけたのか?」

「面白いものっていうか……日記……いや、手記かな。なんか色々書いてあるよ」

「へぇ……ねぇ、南森君、ちょっと読んでみてくださらない?」


 え?読むの?なんか[偉大なる我が計画のために]とか厨二臭い事書いてあるんだけど……。あ、みんなの目が早くしてって言ってる……仕方ないなぁ。


「えーっと……じゃあ一部抜粋して読むね?」


  ーーーーーーーーーーーーーー


 何者かの手記


 8月4日


 一時はどうなるかと思ったが、なんとか逃げ切り、そして幸運な事に奴らから身を隠せるいい研究場所を見つけた。ここなら思う存分やりたいことができるだろう。奴らを絶望の淵に叩き込むためにまずは人手の確保と情報収集から始めようと思う。


 10月6日


 研究は順調に進んでいる。このペースだと3月までには完成するだろう。とても楽しみだ。


 12月9日


 予想外の事が起きた。研究員の一人が大事な○○○○を一匹、手違いで解放してしまったらしい。すぐに元の場所に押し込んだが、大きな犠牲が出てしまった。これでは研究に遅れが生じてしまう。何か解決策はないものか……。


 2月24日


 ついに解決策が浮かんだ。これで当初の予定通り3月には間に合わせる事ができるだろう。奴らに恐怖を、そして絶望を味あわせる事ができる。

 だが一つ問題があるとすれば、この策を使用すれば、私がその光景を目にする事ができなくなるということだが……。非常に残念でならないが、諦めるとしよう。


 3月25日


 いよいよ大詰めだ。近くの町からよく人間が来るので、捕らえて〇〇〇〇に与えてみたところ、研究通り、より強く、より素早く、より強靭になった。これなら何もかもうまくいくだろう。手始めにまずこの辺りの人間を全て食らうように教え込み、そのあと私も取り込まれるようにしよう。

 一部、このことを知らずにずっと研究をさせている奴らがいるが……逃げられて情報を流されても困るので、〇〇〇〇に吸収させ、封じ込めている扉の解除番号、施錠番号は違う所に隠すことしようと思う。


 全ては我が野望のため。我が主人のために。


  ーーーーーーーーーーーーーーー


 ……流石にこれは冗談なのでは…いやでも行方不明になっている人が実際いるってことはつまり……。


「これって……相当やばいんじゃ…あれ?」


 気がつくと周りには誰もいなかった。北川も、白石さんも、前川さんも。


 なんで?みんな僕を置いて先に帰った?いや、そんなはずはない。手記を読んでいる間誰かが去っていくような足音はしていなかったはずだ。それにみんなノートに興味津々だったし聞かずに帰るなんてないだろう。


 ふと、何かの気配を感じて視線が下に向いた。そこには人一人が入りそうな穴が空いていた。さっきまでは無かったはず……一体どうして……。


 僕が何故、どうしてと考えていると奇妙な音が聴こえてきた。ぐじゅる、ぐじゅる、と何か水気を含んだ大きなものを引きずるような音だった。そして、()()は突然床の穴から姿を現した。



 ()()は黒く、玉虫色のヘドロのようだった。だが、それはただのヘドロではなかった。ドロドロの表面のいたるところに目玉のような器官が着いて、蠢いていた。()()は際限なく穴から出てきていて、今では部屋を埋め尽くすほど、大きくなっていた。

 そして()()は突然、鳴き声とも叫び声とも区別がつかない、大きな声をあげた。



「テケリ・リ!テケリ・リ!」



 僕はその時理解した。僕の幼馴染たちはこいつに食われたのだと、そして今から僕も食われるのだと。

パニックになって叫んだり、足がすくんで動けなくなる、なんて事はなかった。ただ、わかってしまったんだ。逃げても無駄なんだと、走っても結果は変わらないんだと。


 あぁ、こんな事になるんだったら、肝試しに行くのは止めるべきだったなぁ、と今になってはどうしようもないことを考えていたら、突然プツンと意識が途切れた。



 ーーーーーーーーーーーーーーー



 全PL「「「「おいGM!初見殺しじゃねぇかこんなの!!」」」」


 いやぁ……時間経過でショゴスを徘徊させるつもりだったんだけど………ノート読むのに30分くらいかけてるから出てきちゃったんだよね。

 ていうか、まさか暗闇で技能値低下させてるのに目星成功させるとか思わないじゃん。誰だよ5%引き当てた奴。


 PL1「当たったんだから仕方ないよね()。というかなんでそんなにショゴスが強いの、みんな一撃で死んだよね」


 PL2「頼れる兄貴分として戦闘技能に振ってたのに全部無駄になったんだけど」


 ショゴスが強い理由?そりゃああれだよ、うちのショゴス君は人を食べるたびに一部ステータスが1D6上昇するように設定してたから。最低でも15人は食べてるからかなり強くなってるよ。あと[押しつぶし]の技能は100%命中にしてたから。


 PL3「それにしても早かったなぁ……このままじゃ白石さんただのドSのままなんだけど」


 PL4「まだ何にも探索してないのに終わったよね……これ本来ならどんなシナリオだったの?」



 本当は探索者の友人の誰かが行方不明になって、廃病院に行ってショゴスを封じ込める地下室の鍵を二階で見つけたり、研究者たちが食べられて放置されている血だらけの部屋を見てSAN値チェックなんて考えてたんだけど。みんな高校生で始めたいっていうからちょっと変更したんだよね。


 まぁ何はともあれ、お疲れでした。


 全PL「「「「お疲れ様でした!!」」」」


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