キーワード:魔が差した、どさくさに紛れて。パンドラの箱
「我が名がマカロン、助けてくれたお主には一つの願いを叶えよう」
そう俺に告げてきた青髭のおっさんが突如、目の前に現れた。大柄な男で、お相撲さんみたいなデカいお腹を自分の手でパチンと叩く。
なぜこんな不可解なことになったのかと言うと、家の蔵で探し物をしていた時だった。目の前には一つの宝箱。祖父からは絶対に開けてはいけないと、口うるさく言われていたのだが、魔が差したというしかない。祖父の言いつけを守らなかったから今、宝箱から出てきた不審者が目の前にいる。
横に居た俺専属のメイドの松下と顔を合わせた。
「坊ちゃま、ここは危険です。不審者かもしれません」
松下はマカロンと言うおっさんを睨みつけて、目で牽制する。俺はチラリと蔵の日本刀を見る。不審者ならばこいつで切ってやっていいかもしれない。
マカロンというおっさんは人差し指を揺らし、口でちちち、と言いながら、
「この考えは危ない。せっかく願いを叶えてやろうと言っているだろうが。魔が差したって言っても人殺しならぬ、精霊殺しはいけない」
マカロンは俺に近づき、ニコリと微笑む。まさか俺の思っている事を。ってこいつ精霊だったのかよ。
「心を読んだのか?それに精霊って……お前は何者だ」
「フフフ、我が名はマカロン。お主の欲を満たすもの。そなたの心は、そこのメイドのパンツが見たいんじゃないのか?」
「べ、べべべ別に見たいってわけじゃ……」
俺は顔を真っ赤にしながら、目線を逸らす。こいつは俺を惑わす不審者だ。心を落ち着かせて対応すれば何とか……。
「メイドというモノはいいぞ。服従関係であり、なんと言っても男のロマンだ。仕事の時に見せる素顔と素の時の表情のギャップ。たまらん。それに隣にいる松下というメイドのパンツはクマさんおパンツ、それにピンク色だ。それ以外にも……ぐふぁああああああああ」
マカロンの言葉を最後まで言う前に、松下が家の蔵にあった日本刀でマカロンを頭から真っ二つにした。その後、霧状になり、宝箱の中に戻っていく。
「つまらぬものを切ってしまった。さあ、坊ちゃま、お勉強の時間です」
日本刀を鞘に納め、プイっと顔を背け、俺に言う松下。
「クマのパンツは可愛いと思うぞ。俺は好きだ」
「坊ちゃま!!!」
松下は耳まで真っ赤にしながら、俺に一喝した。仕方がないので松下の指示に従うことにした。なんせ、松下のスカートが背中のファスナーに引っかかって、スカートの中が丸見えだからだ。ドキドキしながらも今の現状を作ってくれたマカロンのおっさんに感謝をしつつ、新たな属性が付いてしまったみたいだ。
「どうしてくれよう」
今後、マカロンというおっさんを呼べる機会があれば、話の続きを聞くついでに俺の欲に対してめいいっぱい語ってやろうと思う。