共同戦線2 懐かしい香りとある日の悔い
色々、整合性が取れてない所があるかもしれませんがご容赦をお願いします。
いつも、読んでくださる皆様ありがとうございます。
海岸線から丘陵地帯が広大に広がり、その上にルーベルシュテインは街を形成している。
4人の乗った列車は、街並みを垣間見た後、トンネルの中に入っていき程なくして地下駅に着いた。
ルーベルシュテインの主な交通手段は地下鉄道であるから様々な路線が蜘蛛の巣状に張り巡らされている。駅に降り立ったら、夥しい人々が往来をしていた。駅の大きさもかなりの物だ。
とりあえずの行く先を魔術省のルーベルシュテイン支部に決めて、改札を抜け、地上に出るためのエレベーターに4人は乗った。
外は晴れやかに澄み渡り、栄えた街には平和を享受した人々が穏やかに日常を過ごしていた。
「変わらないな、此処は。・・・いつ来ても空気が肌に合う。」
ルートは、いつものクールな顔色を一つも崩さないが、無意識にこのような言葉がでるのだからこの街が好きで、色々な感慨も沸いているのだろう。
スワンソンは、そんな姿を見て心なしか嬉しくなりほくそ笑む。
「なに、笑ってんだスワンソン。」
「いや、別にぃ。」
「気を引き締めろよ。」
「お前が言うな。」
仲が良いのか悪いのか分からない。そんな、距離感だ。
レイナとリンジーも二人の姿を見て、顔を見合わせ微笑んだ。
「ルートさん、魔術省はどちらでしょう。」
「もう少し上の方だな。」
4人が出てきた所は、緩やかな坂になっている街の中腹辺りであり上に向かって歩き出すことにした。
街の大通りを歩けば、道の左右に様々な店々があり軒先の店員たちはルートに気づいては声を掛けてくれた。本当にこの街のスターなのだ。
声を掛けてくれる人々の中にルートは、ある人を見つけ出す。
「おい、ロカじゃないか?久しぶりだな。」
目深にニット帽をかぶり作業服を着ている少年が、キツイ目付きでルートを睨んでいた。
「知り合い?ルート。」
リンジーが、質問する。
「ああ、甥っ子だ。姉さんの息子だ。」
少年は、ルートの目の前に歩いてきて投げ捨てるように言葉を発した。
「やっぱり、ルー兄か。何しに来たんだよ。今更。」
ルートは、困ったような顔になる。
「任務だよ。久しぶりだな。・・・元気そうだな。お母さんはどうしてる?。」
できるだけ優しい声色を作っているのは明らかだった。
「みんな、元気だよ。それにしても久しぶりの帰省が任務って。お祖父ちゃんとお祖母ちゃんのお墓には行ったの?任務ってどういった内容?。」
敵愾心は、消えぬままだ。
ルートは、口籠ってしまった。少年の言う通り久しぶりの帰省が仕事だという事に、背徳感があるのかもしれない。そんな、ルートに変わってスワンソンが答える。
「この街で、堕天使【フューラ】の反応が有ったんだよ。なにか、心当たりないか?。」
「見ての通りこの街は平和そのものだよ。あんた達なんか必要ない。国家魔術師じゃなくても優秀な人はこの街にはいるから。」
「生意気なガキだな。それに、優秀っていうのは俺達みたいな魔術師の事を言うんだよ。」
「うるさいジジイだな。優秀ならこの国の魔物をすべて消してみろよ。」
思わず、スワンソンは少年の胸元を掴んだ。
「ガキが、調子にの」
「いいんだ、スワンソン。悪かったな。」
ルートは、スワンソンの手を少年から払い2人に謝るように呟いた。
こんな、ルートは学校の時から見たこと無かったからスワンソンも気が引けた。
少年は、居ずまいを正し踵を返し坂の下に歩き出した。その背中にルートは声を投げ掛けた。
「ロカ!、学校の友達たちは元気か?。」
少年は、一瞬立ち止まり直ぐにまた歩き出し小路に消えて行った。
「いいんですか?ルートさん。追いかけなくて。」
レイナは、心配するように声を掛けた。
「いいんだ。あいつの言う事も間違っちゃいない。」
「それにしても、あんな生意気な事を言うか?普通。なんか、隠してるんじゃないか?。」
スワンソンは、怒ったように言う。
「ふん。お前にしては鋭いな。」
ルートは、ようやくいつもの調子に戻ったようだ。
「昔は、あいつ素直でいい奴だったんだ。スワンソンの言う通り何か隠してるな。堕天使【フューラ】の事も何か知っているかもしれない。」
ルートは、3人を見渡した。
「悪い、先に魔術省に行っててくれ。ちょっと、寄る所ができた。」
「寄るとこって何処だよ?。」
スワンソンは、食い下がったがリンジーに腕を掴まれた。
「分かったわ、先に行ってる。待ってるよ。」
「悪いな。」
そう言い残してルートも小路に消えて行った。
仕方なく3人は顔を見合わせ、「やれやれ」というような苦笑いを浮かべ魔術省への坂を歩き出した。