共同戦線4 慈しみと手がかり
「姉さんは綺麗な黒髪だった。」
ルートは、虚空を朧げな瞳で見て話した。
「俺が、魔術学校に入学して、初めて此処に帰って来た時、姉さんは物凄く悲しそうに俺の髪を見つめた。黒色の髪が、聖魔術の影響で銀色になってしまったから。」
銀色の髪の毛先をルートは手でつまんだ。
「両親も聖魔術師で、忙しく各地を転々と飛び回っていたから、子供心に姉さんは寂しい思いをしたんだ。それに俺にとっては親代わりでもあった。そんな俺が、魔術学校に行って親と同じ銀髪になってしまって姉さんの孤独感は増すばかりだったんだろう。それに、姉さんだけ魔術を扱う才能が無かったんだ。」
一口ワインを含んで話を続ける。
「そして、大戦が起こってしまった。俺は学校で帝都に居たが、両親は此処に戻り街を守ろうとした。そして、命を落としたんだ。自分の命は助かったが、姉さんは魔術師の仕事をすごく心配するようになった。身内は俺だけになったからな。」
話を聞いていたスワンソンは瞳をルートから床に落とした。
「そして、少し経って結婚をして、ロカが生まれた。幸せそうだった。自宅は小さな家だったが3人で住むには十分な広さだった。」
「なんで、こんな話を俺たちにするんだ?」
訝しげにスワンソンは尋ねた。
「こんな話、今回の任務と関係があるのか?。」
「あるんだ。」
直ぐにルートは答えた。
「家に行ったら、もぬけの殻だった。家の鍵は開いていて枯れた花と黴たパンがテーブルに置いてあった。随分前に家を出たんだろう。」
「家出という事ですか?。」
レイナが意を決した様に口を出した。
「それはない。あんなに幸せそうだったのに家出なんて考えられない。それにな、魔術反応があったんだ。僅かにだけどな。姉さんの家族は魔術の知識が全然ないから誰かが来て魔術を使ったという事だ。」
「まさか、それって?。」
レイナは眼を驚いたように見開く。
「そう、おそらく堕天使【フューラ】だ。」
「でも、なんでお前の家族の前に現れたんだよ?」
「姉さんの家には、親の持ち物がすべて置いてあったんだ。それが、すべて無くなっていた。何かが、あったんだろう。それが何か、俺は知りたい。それに姉さんがどこに居るのかも。」
「甥っ子さんは、何か知っているんでしょう?話したんですか?。」
「いや、探したんだがどこにも居なかった。あいつの友達の家にも行ったが、知らないと言われた。」
「どこか、心あたりは無いんですか?。」
「無い事はない。この街に来てから堕天使【フューラ】の反応が有ったにしては魔術反応が街中に見当たらなかった。おかしいとは思っていたんだ。」
「確かに、そう言われればそうですね。」
「ここの街中には隠れる所なんか無い。どこも建物が建っていて人がいるし、それに魔術省もある。でも、一箇所だけあったんだ。人々の目に触れないところが。」
「地下か?。」
スワンソンがそう言うとルートは軽く笑みをこぼした。




