あたらしいまほうつかい
「このりんごをたべれば、わたしのねがいは かなうのよね、おばあさん」
しらゆきひめは、なにもうたがうことなく、おきさきさまに ききました。
おきさきさまは、なんともいえず、ただうなづきました。
(これでほんとうに、いいのだろうか?)
おきさきさまは、じぶんに といかけました。
でも、しらゆきひめは そんなことを しるわけもありません。おきさきさまがうなづいたのをみて、にっこりとわらって、どくりんごをくちにしようとしました。
「まっておくれ、おじょうちゃん」
そのしゅんかん、おきさきさまは、しらゆきひめをとめました。
「なあに?」
おきさきさまは、おもいました。
(いま しらゆきひめに どくりんごをたべさせたら、いつか こうかいする)
「りんごを まちがえたみたいなんだ。ねがいをかなえてくれるりんごは、それじゃなくて……こっちだよ」
おきさきさまは、しらゆきひめに どくのない、ただのりんごを わたしました。
「あら、そうだったの。ありがとう、おばあさん」
しらゆきひめは りんごをてにとり、めをとじて、いいました。
「おかあさまのような、まほうつかいになれますように」
そして、りんごをくちにしました。
そのしゅんかん、おきさきさまは しらゆきひめに じぶんのまほうのちからを すべてゆずりわたしました。
いまじぶんにかけている、へんそうのまほうが おしろにかえるまで とけないぐらいの まほうのちからだけ のこして、のこりは すべて しらゆきひめに あげたのです。
おきさきさまは、きづいたのです。
いままで、じぶんが なにをしてきたのかに。
(いままで、わたしは ひとびとを みくだしつづけてきたんだわ。なんて、なんて……みにくいのでしょう。そんなわたしが まほうのちからをもっているよりも、いつも あいてに やさしく せっすることができる しらゆきひめが まほうのちからをもっていたほうが、はるかにいいわ)
そっとしらゆきひめが めをあけました。
「これで、ねがいはかなったのかしら?」
「ためしてごらんよ。そうしたら、すぐにわかるだろう?」
「そうね。やってみるわ」
しらゆきひめは、すこし ぎこちなく、ちかくにあった いすにむかって てをふりました。
するとどうでしょう、そのいすが かってに うごいたのです!
「まぁ!」
しらゆきひめは、おどろいて こえをあげました。
「わたし……まほうつかいになれたのね!かなわなかったはずのゆめが、かなったのね!」
しらゆきひめは、うれしそうにいいました。
「よかったね、おじょうちゃん」
「おばあさんのおかげよ!ありがとう!」
「いいんだよ」
おきさきさまは そういってから、そろそろ へんそうのまほうが とけてしまうことに きづきました。
「わたしはもう、かえるからね」
「もう かえってしまうの?……またどこかで、おあいしましょうね」
「ああ、いつかね」
そういって、おきさきさまは こびとのいえから はなれていきました。
そして、おしろについたとき、へんそうのまほうは とけました。
そこにいたのは、いままでのおきさきさまとは、すこしちがうひとでした。
いままでのおきさきさまは、きんぱつで きっちりとパーマのかかった かみのけをもっていて、めのいろも あおいいろでした。
しかし、それは せかいいち うつくしいひとで いたかったがために、じぶんにまほうをかけて つくっていた すがたでした。
ほんとうのおきさきさまは、ちゃいろのすこしふんわりとした かみのけをもち、こげちゃいろのめをしていました。
おきさきさまは かがみにうつった ほんらいの じぶんのすがたを みて、ふふ、とわらいました。
(つくりものの わたしよりも、ほんとうの わたしのほうが、なんばいも いいような きがするわ。どうして そのことに きづかなかったのかしら)




