にせもののりんご
「おばあさん、ありがとう。でもわたし、りんごは きらいなの」
「えっ……そうなのかい?」
おきさきさまも、これはそうぞうしていませんでした。
しらゆきひめが りんごぎらいだなんて、まったく しらなかったのです。
「ええ。りんごをかじったときの、しゃりしゃりするおとが、だいきらいなのよ」
「……そうなのかい?これはゆめをかなえてくれる、まほうのりんごなのに」
おきさきさまは、とっさに うそをつきました。まほうのりんごだといえば、きっと たべるだろうと おもったのです。
「……ほんとに?このりんごは、ねがいを かなえてくれるの?」
「ああ。このもりのなかにある、『ふしぎのみずうみ』で ひやしたりんごだよ。『ふしぎのみずうみ』で たべものをひやすと、それは ねがいをかなえる ちからを もつと いわれているんだよ」
それも、うそでした。
でも、しらゆきひめは そうとはしりません。
「そうなの?しらなかったわ。なら、このりんごを たべてみても、いいかもしれないわ」
おきさきさまは、しめしめとおもいました。
「おじょうさんの ねがいごとは なんだい?」
「わたしのねがいごと?……これは、ほんとうに ひみつの ねがいごとなの。だけど とくべつに、おばあさんにだけ、おしえてあげる」
しらゆきひめは、にこっとわらいました。
「それはね、おかあさまみたいな まほうつかいに なることなのよ」