わかりあえたなら
おきさきさまは、ふたたび くちを ひらきました。
まだまだ はなしは おわっていません。
「わたしは しらゆきひめが せかいいちうつくしいと しって、しらゆきひめのことを すごく にくんだんだよ。それで かじを おしつけたり、こえをかけられても むししたりしてきたんだ。そして、わたしは しらゆきひめを……ころそうとさえ したんだ」
「えっ……そうだったの?じゃあ、かりゅうどさんに わたしをころすように めいれいしたのも……」
「……このわたしだよ」
しらゆきひめは、だまりました。
(ああ、こんどこそ わたしは きらわれる)
おきさきさまは、おもいました。
(でも、きらわれてもいい、すべてを はなしておかなければならない。ほんとうの わたしを しっておいてもらいたい)
おきさきさまは、うつむきました。
そして、あたりは ちんもくに つつまれました。
「でも おかあさま、いまは わたしのことを あいしてくださって いるのでしょう?」
「えっ?」
しらゆきひめの ことばに、おきさきさまは おどろきました。
「わたしは おかあさまみたいな まほうつかいに なれたんですよ?それに わたしは おかあさまと ずっといっしょに いたんです。おかあさまの きもちぐらい、わかって とうぜんでしょう?」
「……しらゆきひめ……」
「いま、おかあさまが わたしのことを すきでいてくださるなら、わたしは それだけで じゅうぶんよ」
(なんて しらゆきひめは やさしいのだろう。もしくは……おさなすぎて ふくざつな かんじょうを りかいできないだけなのか……)
おきさきさまは、おもいました。
(それでもいい。しらゆきひめは、わたしのことを きらわないで いてくれる)
どちらにしろ、おきさきさまは しらゆきひめのきもちが とても うれしかったのです。
あんなに ひどいことばかりを したのに、ゆるしてくれる しらゆきひめに、いまだけは あまえても いいかな、とおもいました。
「さいごに……わたしは しらゆきひめに ひとつ うそをついたんだ」
「うそって……なあに?」
おきさきさまは、しんこきゅうしました。
「おばあさんにもらった、りんごだよ」
「あのりんごが……どうかしたの?」
しらゆきひめは くびを かしげます。
「あのりんごは……ただのりんごだよ。まほうのりんごなんかじゃ、ないんだ」
「えっ?……じゃあ、なんで わたしの ゆめは かなったの?」
しらゆきひめは おどろいて ききましたが、おきさきさまは はなしつづけます。
「もっというと……おばあさんはさいしょ、りんごをまちがえなかったかい」
「……ええ、まちがえていたわ」
「……ほんとうは しらゆきひめを ころすために、どくりんごを たべさせるつもりだったんだよ。だけどやめたんだ。だから とちゅうで どくりんごを ただのりんごに かえたんだ。そして、しらゆきひめの ゆめを かなえるために、わたしの まほうのちからを ぜんぶあげたんだよ。だから いま わたしは……まほうがつかえないんだ」
「えっ⁉︎」
しらゆきひめは、きょう だした こえのなかで いちばん おおきな こえを だしました。
「おかあさま……まほうが、つかえないの?」
(あこがれだった おかあさまが……まほうを、つかえないなんて……そんなの、いやだわ)
しらゆきひめは おもいました。
でも、まほうつかいに なれるのは、うまれつき まほうがつかえるひとか、おやが まほうつかいのひとかの いずれかです。それいがいのひとは、しらゆきひめのように まほうのちからを ゆずってもらわないかぎり、まほうつかいには なれません。
まほうのちからを ゆずったひとは、もう、もともと まほうのちからを もっていなかったひとと まったく おなじです。だれかに まほうのちからを ゆずってもらわないかぎり、まほうつかいには もどれません。
「なら おかあさま、わたし、おかあさまの じまんの まほうつかいに なれるように、じまんの むすめに なれるように、がんばります。おかあさまの ぶんまで、たくさんのひとを たすけられるように なります。だから おかあさま、たまには アドバイスとか いただけますか?」
「もちろんよ!」
おきさきさまは、そくとうしました。
ふたりは、やくそくしました。
「これからは、もっとなかよくしましょうね。わたし、しらゆきひめのことが、だいすきよ」
「もちろんです!わたしもおかあさまのことが だいすきですよ!」
こうしてふたりは、いつまでも いつまでも、しあわせに、なかよく くらしましたとさ。
めでたし、めでたし。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!いかがでしたでしょうか?
わざと全てひらがな表記にしたため、大変読みにくかったのではないかと思います。
評価・感想等あれば、いただけますと幸いです。




