うそつきは おしまい
「しらゆきひめ。すこし、はなしがあるの」
おきさきさまは、ゆっくりと くちを ひらきました。
「なあに、おかあさま?」
しらゆきひめは、なんのことだか さっぱりわからないようです。なみだをぬぐって、ききました。
「ながくなるから、あっちで はなしましょうか。いらっしゃい」
おきさきさまは、しらゆきひめを じぶんのへやに つれていきました。
「さあ、ここにすわって」
ちいさなテーブルに、いすが2つありました。
おきさきさまは、しらゆきひめに いすにすわるように うながします。
しらゆきひめは、そっと いすに すわりました。
おきさきさまも、もう1つのいすに すわります。
「……しらゆきひめ、もりのなかで、おばあさんにあわなかった?」
おきさきさまは、すべてをはなそうと おもっていました。
もりのなかで しらゆきひめが であった おばあさんは、じぶんだと いうことも。
じぶんは ほんとうは、しらゆきひめが おもっているような やさしいひとでは なかったことも。
あのりんごは ただのりんごだったことも。
そして、じぶんは しらゆきひめのことを ころそうと していたことも。
「……おあいしたわ。わたしのゆめを、かなえてくださった、こころやさしい おばあさまよ」
おきさきさまは、しんこきゅうを しました。
「じつは、あのおばあさんはね……わたしだったの」
「……えっ⁉︎」
しらゆきひめは、びっくりしていいました。
「あれは……おかあさまの へんそうだったの?」
「そうなるね」
しらゆきひめは かおを まっかにして、だまりこみました。
やがて、ぽつりと つぶやきました。
「わたしったら、はずかしいわ。そうとはきづかずに、おかあさまに いつもおもっていることを すべて、うちあけて いたんですもの……」
「……でも、わたしは うれしかったんだよ。しらゆきひめが そうおもっていたなんて しらなかったからね。ありがとう」
「しらゆきひめ。こんなことをいうと きらわれると おもうけど、きいてほしいんだ」
「なあに、おかあさま?……わたしは おかあさまのことを きらいになったりは しませんから。さいごまで、ちゃんとききますから……」
しらゆきひめの ことばに、おきさきさまは なきそうに なりました。
おきさきさまは、しんこきゅうをして いいました。
「わたしは……しらゆきひめが おもっているような、やさしいひとでは なかったんだよ」
さすがに こんなことを いわれると、しらゆきひめも どうようしてしまったようです。
「……えっ?なにをいっているの、おかあさま?おかあさまは とても こころやさしいかたよ!」
「ほんとうは、ちがうんだよ……」
おきさきさまは、はなしました。
かじを しらゆきひめに させていたのは、せかいいち うつくしいと いわれていた しらゆきひめが にくたらしかったからだったこと。
こえをかけられても つっぱねていたのは、これもまた しらゆきひめのことが にくたらしかったからだということ。
まずしいひとたちを たすけていたのは、じぶんが ゆうえつかんに ひたりたかったからだということ。
だからけっして、じぶんはこころやさしいひとでは ないということ……。
すべてをきいた しらゆきひめは、いいました。
「でも……わたしだって おかあさまに かんしゃしているのだし、まずしいかただって、よろこんでいらしたのでしょう?おかあさまは けっして、わるいことを したのではないと、わたしはおもうの。だから おかあさま、きにしなくて いいとおもうわ」
まだまだ おさない しらゆきひめは、ふくざつな きもちが りかいできません。
ただただ じゅんすいに、よいことをしたのだから、それでいいじゃない、とおもったのです。
たとえ、どんなりゆうで それをしたのだとしても。
「ありがとう、しらゆきひめ」
おきさきさまは いいましたが、けっして しらゆきひめを にくんでいたことや、めしたの ひとびとを みくだしていたことを わすれてはならない、とおもいました。
(わすれてしまったら、わたしは また おなじあやまちを おかしてしまうかも しれないから。もうにどと、ほかのひとびとを ばかにしたり みくだしたり しないために、おぼえておこう)




