4話 召喚魔法 -2
そう、召喚魔法だ。
このちっさいドラゴンはみずから現れたんじゃなく、凛が自分でも気づかないうちに使った召喚魔法で召喚されたんだ。
証拠? 証拠なら凛自身がたった今証言したじゃないか、こんなドラゴンなら飼ってみてもいいかな、って呟いたら、そばにいたって。魔法の文言としてはいかにも現代風でちょっと雑だけど。
証拠にならない? この世界に存在しない生き物が、呟いただけでなんの予兆もなくそばに現れたことを、じゃあこの世界のどんな論理を使えば説明できるの?
頭から否定してきた凛にそう反論すると、ぐっと言葉を喉に詰まらせた。
僕の説明は正論ではないだろうけど、そもそもこの世界の理の外にある事象に、正も反もない。
「うー……でもなー……」
「なに、まだ不満? だったら、百聞は一見にしかず、じゃない?」
「は?」
僕の言葉の意味が分からなかったのか、キョトンとした顔で見上げてくる。……ここまでの展開を考えたら、すぐに分かると思うけど。ま、現状を受け入れてるのと受け入れられてないのとの差、ということにしとこう。
「召喚魔法を使ってみたら?」
「……は? あ……」
……付き合いの長い僕だから分かるぞ。「あんたバカ?」とか耳慣れたセリフを言いかけたな。
でも、今の凛には言えるはずがない。だって、その否定を真っ向から否定する存在が、さっきからずーっと凛の顔を嬉しそうに見上げてんだから。
たぶん、マンガで表現したら眉間にくしゃくしゃの線がはいってるだろな、と想像できる困り顔の凛だったけど、しばらくして「分かった」と頷いた。
よしよし、なかなか物分かりがいいじゃないか。
「じゃあ、やってみるけど。期待しないでよ」
「そうそう。やるのはタダだし、違ったら違う可能性を考えたらいいだけだし」
「……なんであんたはそんな気楽なんだか……」
とかぶちぶち文句をたれながらも、凛は目をつぶり、なぜか両方の人差し指でこめかみの両側をぐりぐりとひねりながら、「でてこいー。でてこいー」とうなり始めた。
……それ、魔法のつもりか? まったく、貸してやったアニメからなにを学んだのか。
……ん? あれ? そう言えば……
「ねえ凛、お前なに召喚しようとしてんの?」
「え?」
きょとんとした顔の凛が僕を見上げてきた瞬間――
公園広場の中心にすごい勢いで黒い稲妻が落ちた。
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召喚魔法。
今思えば、ファイナルファンタジーの功績って大きいですよね。
凛の不器用なカワイさを、出したかったシーンです。