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1話 『魔法大全.xlsx』を修正してみた -2


 もちろんそれは、リアルにだって言える。


 うちの学校は、調和性の良さが売りだそうで、イジメもここ10年以上にわたって起こったこともない、団体行動で問題を起こしたこともない、ということらしい。


 それは対外的にもやたらと押してて、その代表格が、もう少しで行われるうちの体育祭で、毎年なぜか刷られる小冊子だ。


 なにが載ってるかって?


 とっっってもウザいことに、一つ一つのクラスの紹介や体育祭への意気込みなんかを載せてるのさ。『体育祭一つとっても、我が校は全生徒一致団結して成功させます』なんてことを学校の外へ向けて超アピールするわけ。


 超絶にバカらしいね。


 どんだけ学校がアピールしても、僕のクラスに1人ハブられてるヤツがいるのは事実だし(僕じゃないぞ。僕は自らぼっちを選んだんだ)、体育祭の準備をサボってる奴ヤツいるのも事実だし、なにより誰とも関わりたくないぼっちの僕をこの学校へ入学させてしまってるのが事実だ。


 ――まあ僕も、その辺りのことをよくよく調べもせずに選んじゃったわけだけど。


 ……長々と話しちゃったけど、要は人間関係なんて、外面は良くしてても少し掘っちゃえば中身が見えるわけで、その中身こそが結局は本音なのさ。


 自動回復したHPで一般クエストを進めたあと、アプリを閉じる。


 さて。


 ……やることなくなったな。

 どうしようかな。


 少し悩んだあと、僕はふと思いたって、机のノートPCの前に座る。電源を入れてログインし、超絶有名な表計算ソフトを立ち上げる。


 開くファイルの名前は、『魔法大全』。


 ……勘違いしないでよ。べつに、「もしかしたら魔法が使えるかも」とか厨二病めいたことを考えてるわけじゃないよ。


 新しく書こうとしてるラノベ小説の設定を考えてるの! それに出そうとしてる魔法を、Excel(あ、言っちゃった)ファイルでまとめてるだけなの! ……まあ、50個以上の魔法の設定を作ってるのはちょっとやり過ぎかな、とは思ってるけど。


 いいの! 僕は1からかっちり決めないと気が済まない質なの!


 と言い訳しながら、新しい魔法の設定を考える。


「……でも、さすがにネタが切れはじめたかなー」


 ありがちな魔法はイヤだったので、自分なりのオリジナル魔法を考えてきたわけだけど、さすがにそろそろネタが尽きはじめてきたかな。


 机に転がってたペンを指でクルクル回しながら、早々と机の前を離れてベッドに倒れこむ。


 ペンは当然、指から落ちてシーツの上に転がる。


 それをじっと見つめるうち、ふと思いつく。


 たとえば、こういう物体を銃の弾丸みたいに打ち出せる魔法とかどうかな。こんな感じで。


 ペンを手に取って、『ソニックブリッツ』と即興で付けた魔法の名前を呟きながら、ダーツの要領でピュッと投げてみた。


 すると、ペンはコンクリート打ちっぱなしの部屋の壁に根元まで突き刺さる。


「うーん、でも、物体がなかったら使えない魔法なんて……あ、そうか。杖とか、魔法の発動媒体がなくても使えるって設定にしたらいいのか。だったら非常用とかにも便利だぞ」


 よし、魔法の設定が1つできたぞ。


 ちょっと気分が良くなって、ベッドの頭元にあるペン立てから他のペンを取り、『ソニックブリッツ』と呟いて投げる。ペンが壁に根元まで刺さる。


 他のペンを取り、『ソニックブリッツ』投げる。壁に刺さる。ペンを取る。『ソニックブリッツ』投げる。刺さる。


「…………」


 コンクリート打ちっぱなしの、部屋の壁に刺さったままの、4本のどこにでもあるペン。何かの特別性でもなく、百均で買った4本の普通のペン。


 ベッドから立ちあがる。

 壁に突き刺さったままの4本のペンへ、手のひらを向ける。


『グラビティ』


 僕の考えた魔法だ。『魔法大全・xlsx』にも書いてある。有機物・無機物の区別なく、術者を中心とした重力で対象を捕らえる魔法。


 壁に刺さったままの4本のペンがグリグリと動いたあと、壁からスポッと抜けて、ヒュッと飛んできて、僕の手に収まった。


「…………」


 手に収まったペンを見つめたタイミングでスマホが鳴った。


 電話に出ると、相手は姶良凛あいらりんだった。りんは、僕の幼なじみの女の子だ。


己慧琉みえる……ちょっと話したいことあるんだけど』


「奇遇だね。ちょうど僕もだれかと話したかったんだ」


 手のひらのペンをカチャカチャともみながら、僕は、たぶん笑った。




実際、急に魔法を唱えられたとき、思考が止まるか、一瞬自己逃避するかになるかと思うんです。

今回は話の流れも考えて、自己逃避を選んでみました。

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