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8話 瑠璃華(るりか)せんぱい、見参 -1


 私立葛城学園。


 言うまでもなく、僕の母校だ。


 県内トップクラスを誇るその理由は、経営母体が国内有数の経営規模を有する東之京ひがしのみやこ財閥だからだ。


 どこまで本当かウソかは知らないけど、娘を溺愛しすぎる両親が遠くの高校へ行かせたくないためにこの高校を開校して、なおかつその娘が自由闊達じゆうかったつにハイスクールライフを過ごせるよう、生徒主体な校風を作ったらしい。


 そのせいで――と言ったら悪く聞こえるよな――、開校当時から、場合によっては教師より強い権力を持っているのが、生徒会だ。


 と言ったって、べつに学校を支配するほど強いわけでもなく、服装規定をより現代的に少しアレンジを加えたり、学食を全体的に20円ほど値下げさせたり、とか、ふんわかしたその程度だったらしい。



 ――当初は。



 今から二年前、ついに葛城学園が開校された最大の理由――ウワサね、ウワサ――が実現された。


 つまり。


 東之京ひがしのみやこ財閥の娘、東之京瑠璃華ひがしのみやこるりかが満を持して入学したのだ。


 もう当たり前といえば当たり前のように、入学と同時に東之京瑠璃華ひがしのみやこるりかは生徒会長に就任。


 それを幕開けに、生徒会は名実ともに葛城学園のトップに君臨。生徒会メンバーも一新されて、それ以来、葛城学園生徒会には校長もおいそれと意見できない状況が組みあがった。まあ、校長も結局は雇われの身だからね。


 とまあ、以上がうちの高校の状況だ。東之京瑠璃華ひがしのみやこるりかは、現在3年生。権力・権威ともに最高潮だ。





「……たしか、東之京ひがしのみやこ財閥の端っこに天王寺てんのうじグループってのがあったっけ」


 生徒会バッジを指でピンとはじいてやりながら、なんかのネットニュースで斜め読みした記憶を掘りだした。


「なるほど、だからこんなのでも生徒会メンバーになれたのか。納得しましたよ、先輩」


「あう……!」


 腫れぼったい目でじろりとにらんでくる先輩。

 この状態でのその反骨精神、おおいにけっこう。でも、少しばかしでもしゃべれると思うけど……


 あ。もしかして鼻だけじゃなくてあごの骨もやっちゃってる?


「やれやれ。先輩、喋れるように回復してさしあげますよ」


 僕の『ヒーリング』は、単純にダメージを回復するのでなく、『どの程度に』という回復の状態を指定して回復させることができる。ので極論、微回復から全回復、個所を限定しての回復なんかもできてしまう。


 今回の場合は、あごの骨に限定して回復する……




 ……つもりだったんだけど。




『ソニックブリッツ』

 そばに転がってる石をつかみざま、魔法を唱えつつ気配を感じた方向へ投げつけた!


 特大の銃弾と化した石は狙いあやまたず木の幹にヒットするとまるで豆腐みたいにカンタンに貫き、そしてその陰に隠れてた人影をも捉えた!



――はずだったんだけど。



「あれ」

 気配を感じたその場所には、もうだれも立ってなかった。


「え、え? どうしたのよ己慧琉みえる!」


 りんが戸惑った声をあげる。……こいつの勘の鈍さって、非戦闘員並みだよな。もしかしてチートスキルは召喚魔法だけで、身体的なステータスは変化してないのかな?


 召喚魔法が使えるだけの非戦闘員はおいといて、僕は油断なく立ち上がろうとした。立ち上がろうとして――


「あ、あう、あう……」

「…………」


 天王寺てんのうじ先輩が……もしかして、おびえてる? なにを言ってるか分からないけど、僕が石の銃弾を撃ちこんだ方向を、おびえた目で見つめてる。


 あんだけ勝気なセリフしか吐かず、重体で倒れたままなのににらんできたこの不出来な先輩が無条件におびえてる。


 ……なら、正体はもう分かったも同然だな。やれやれ、メンドくさいなぁ。



「隠れるなんて、らしくないように思いますが。逃げないので出てきてください、東之京ひがしのみやこ先輩」



「え……東之京ひがしのみやこ先輩?」


 りんのことはムシして、木陰の向こうをじっと見つめる。


 だからと言って、僕はそこにまだその人物がいるとは少しも思ってなかった。当のお相手はすでに違う場所へ移動してると思ってはいたけど――




「なんたることじゃお嬢、そちのおっぱいおっきいのぅ!」

「うにょわあぁぁ!?」


 まさかその相手がよりによってりんの背後をとり、なおかつおっぱ……いや胸を揉みしだくなんてだれが想像するか!?


「うむ、存外の揉みがい、もっとじゃもっと!」

「うにゃあぁ! なに!? なんなのだれっ!?」


 自分の豊満な水風船をぐにぐにと変形させられながらりんは背後を振り返るけど相手を見つけられない、でもそりゃそうだ、ふわふわの巻き毛を揺らしつつりんの背後にぴったりと張りついてるソイツは、背の低い凛(りん、)よりさらに低くてくりんくりんなのだから! ゆえにりんから死角になるのだから!


「こりゃお嬢、そちはなんでブラしとるか! 明日から外して生活せい!」

「なんでそんな訳わかんない命令!? う、うにゃあぁ……!」

「が、がうっ!」


 逃げようと必死にもだえるりんとその背中にひっつくまるで女子小学生みたいな少女、さらにその少女を引っぺはがそうとするだるま! なんだいったいこの光景は!

 ク、クソ! どうやって止めたらいい!

 よ、よし、とにかくまずはりんのたわわな水風船に食いこむ少女の手を……


「どさくさに紛れてなにしとるかっ!」

「がうっ!」

「あうちっ!」


 混乱しかかりつつもベストを尽くそうとした僕は、不条理にもりんに殴られ、だるまに思いきり腕をかまれたのだった……


最後の最後まで東之京瑠璃華(ひがしのみやこ)のキャラ性に悩んでましたが、決めました。

おかげで、強烈にトガッたキャラになりました。

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