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6話 元キャンプ場で遭遇 -4

 2年生が、「おっ」と声をあげる。


「しまった? てことは、オレがここに来ることは分かってたっぽいな。なあ、そうなのか?」


 その言い方に余裕感がたっぷりと表れてて、ちょっとイラッとくる。だから僕もやり返してやることにする。


 2年生にニヤリと笑ってやる。


「まったく、遅いですよ。こっちが監視してることにちょっとは気がつくかと思ったら、よちよち歩いてくるだけなんだもん。もちょっと警戒したらどうですか?」


 2年生のまゆ毛がピクッと動いた。よしよし、この口ゲンカ、初手は僕の勝ちだな。

 僕と2年生の間に少しの沈黙が横たわる。

 やがて、2年生が口を開いた。


「どうやって見てたかは知らねぇが、チョーシこいた口をきくのは感心しねぇな」


「チョーシこいた? 何をおっしゃってんです、先輩の風体にあわせた口のきき方をしたまでですよ」


「ほう、上級生に生意気な口きくじゃねぇか。年上には正しい言葉づかいを、って習わなかったか?」


「習いましたよ、『立派な』年上は敬え、ってね」


「やれやれ、こりゃあ『立派な』年上として、口のなってねぇガキを教育してや……」

「ちょっと!」


 突然割って入ってきたのは、りんの怒気をはらむ大声だった。


 来ると思ってなかったとこからの大声に僕もびっくりしたくらいだから、当たり前のレベルで2年生も面食らっていた。「や」の口のまま、マヌケな顔のままでりんを見てる。


 さっき「怖い」と言ったセリフをもう忘れたのか、りんが僕を押しのけて、ズカズカズカと前へ踏み出ていく。そして、この大バカ者はよりによってこんなことを大声で言い放った。




「あんた、痴話ゲンカってなによ!」




「…………りん……」


 ……頼む。僕の口からため息よ漏れてくれ。

 ……でもどんなに願ってもため息が漏れてくれない、それくらいに僕はガックリきてしまった。


 ねえりん、今めっちゃ緊迫したシーンだったの、分かるよね? それって今このタイミングで言うことじゃないの、分かるよね?


 なんとか絞りだした僕のそんな説得に、でもりんはジロリと僕をにらんでくる。


「じゃあ、あんたもさっきのは痴話ゲンカだっていうの」

「あ、いやりん、違う、論点が違う」

「じゃあ痴話ゲンカだっていうのね!」

「いや痴話ゲンカじゃないけど!」

「じゃあなんで止めんのよ!」

「論点が違うからだよ!」

「なによ、論点論点、って同じことばっか……」


「うるせー!!」


『あ』


 りんがあまりに聞き分けがないから、コイツの存在をつい忘れてしまった。


 先輩の表情は険しくなってて、苛立ちがMAXに届いてそうだった。


「だから、くだらねぇ痴話ゲンカを見せつけんじゃねぇって言ってんだろ!」


 うるさいなぁ、なんだよ痴話ゲンカ痴話ゲンカって、なんでいちいちただのケンカを痴話ゲンカにつなげたがる……


 ……あ。


 あることに気づいて、僕はニヤリと笑ってしまう。

 なるほど、つまりはたぶんそういうことだな。となれば、よし、あおってやろう。


「もしかして先輩……彼女いないでしょ?」


「なぁっ、んなぁ!?」


 それって何語だよ、てツッコみたくなるくらい、そして答えはもう聞く必要のないくらいに先輩が動揺した。


 よーしよし、だったらもっとあおってやろ。


「あー、だから僕らが仲良くしてんのを見てめっちゃ腹立てたんですね」


「な、こ、こ、」


「あーこれはこれはごめんなさい、もっと早く気づいたら良かったですね、先輩のあまりにもモテないっぶりに」


「ちょっと己慧琉みえる、なんの話してるの?」


 怪訝そうな顔つきのりん。よーし、どうせだからりんも巻きこんじゃえ。

 僕はりんの両肩に手を置いて、コイツとの14年の付き合いの中で一番慈しみをこめた目でもって見つめてやる。


「ちょ……み、己慧琉みえる……?」


「あのねりん、この先輩は、恋人ができたことないんだ。だから、愛しあってる僕らがケンカしてるのもイチャイチャしてるように見えるんだよ」


「うやぁっ!?」


 ん? なんだりんのヤツ、顔がめちゃめちゃ真っ赤になったぞ。コイツ、川へ飛びこんだのでもしかして風邪でもひいたんじゃないか? しかも、ガッチガチになってる。

 まあいいや、続き続き。


「でも、りんが悪いんだぞ、そんなかわいく怒るんだもん」


「か、かわっ!?」


「でもちょっと見せつけすぎちゃったね、彼女もいなくてさびしい青春送ってる先輩には刺激が強すぎ……」

「よぉし、てめぇそこ動くな」


 目を怒りで爛々とさせた先輩が、肩に担いでた木刀をぶぉん! と振りおろした。


 途中からなんも言わなくなったな、と思ったら、どうやら怒りの限界を突破しようとしてたらしい。はい、口ゲンカでは僕の完勝。


りん、ちょっと遠くへ離れてて」

「え……」


 僕はりんを軽く押すと、先輩と対峙する。

 ……じゃあ、第2ラウンドだ。次は口ゲンカなんかじゃない。


『チートスキル保持者同士、どちらが強いか?』…………だ。



もし、面白いなと思ってもらえたら、ポイント・感想・レビューをいただけると嬉しいです^_^


ドタバタ会話は書いてて楽しいですが、登場人物のキャラ性を引き立たせる効果もある。

と、筆者は勝手に思っております。

でも、やっぱり書いてて楽しいです。

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