表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/22

6話 元キャンプ場で遭遇 -3


 ……でもこれはちょっと予想外だぞ。


 イメージに写りこんでる2年生へ意識を持っていきつつ、予測してた展開の斜め上をいく状況に、僕は予測の立て直しを図る。


 僕が描いてた予測とは、こうだ。




『チートスキルを得たのは、僕らだけでない』




 これは、りんから電話のあったあの夜からすでに頭にあったものだ。


 僕もりんも、どこにでもいる取るに足らないただの一高校生だ。その僕らが、あの日の異世界転移の失敗によってチートスキルを手に入れた。


 それは問題ない。いやあるけど問題ない。問題なのは――



『チートを手に入れたのは僕らだけと限らない』



 ということだ。


 だって、あの教室には僕を含めた34人がいたんだから。その中で僕とりんだけがチートを得た? 取るに足らない僕らだけが?


 ありえない。


 と考える方が自然だね。


 そしてそこからさらに生まれる問題が、



『どんな考え方を持った誰がどんなチートを得たのか分からない』



 ということだ。


 ……あ、そんな言い方すると勘違いされるかな。


「もしかしたらチートスキルに魅入られたヤツが世界征服をもくろむかも知れない、だからそれを阻止できるように鍛えてるのか!」


 みたいに。

 ……残念ながら、そんなのはない。考えてもいない。なんなら今気づいたくらい。


 僕が考えたことは、


「僕がチートスキルを持ってると気づかれたとき、なんらかのちょっかいをかけてくるかもしれない。でも僕のチートは僕だけのもので、干渉されるなんてごめんだ。だからいつでも火の粉を払えるようにチートを使いこなせるようにしよう」


 ていう感じだ。


 まあ、純粋にせっかく手に入れたチートスキルを満喫したい、てのもあったけどね。


 でも。


 ここに、2年生が現れた。

 しかも、僕らのところへ真っ直ぐに向かってくる。

 であれば、そのことで導ける予測は、これしかない。



『魔法陣が現れたのは、僕らの教室だけとはかぎらない』

 かつ、

『すべての教室で魔法陣が発生したことも否定できない』



 まあ、後者の可能性は低いと思う。すべての教室で発生させるくらいなら、学校まるごと魔法陣でくくった方が手っ取り早いだろうし。


 ただ、前者はほぼ確定に違いない。


 そして、もう一つおそらく確定してるのは、


『この2年生も、なんらかのチートスキルを持っている』


 てことだ。


 なんの力も持ってないヤツだったら、こんなとこまで1人で歩いてくるなんてバカなことはしないでしょ。


 ……だったら。


 僕らが今どうするべきかは、ほぼほぼ決まったも同然だ。


「……そうだ」


 ふと思いたって『バーチャルバトル』の魔法を唱える。


 対象はもちろん、あの2年生だ。戦闘になるかはともかくとして、想定はしといたほうがいいかな、と思ったんだけど……


「……あれ?」


 僕は首をかしげる。

 『バーチャルバトル』の結果は。


 ……圧勝。


 仮想上の2年生はただの高校生で、チートスキルなんかほんの少しも見せることなく、僕に一撃を与えることもできずに、簡単に負けてしまった。


「っかしいな……」


 アイツがチートスキルを持ってないことはないはずだ。……もしかして、対象のチートスキルを、『バーチャルバトル』の魔法が分析できない、もしくは感知できないのか。


 うーん。

 となれば、とるべき行動はひとつしかない、か。


 ……とか思ってたら。


「ど、どうする己慧琉みえる、あたし怖いよ」


 なんて、その言葉どおりめっちゃ不安げな表情のりんがそばへ寄ってきた。


「怖いったって……」


 待つしかないでしょ、と言ってやる。

 今もこっちへ向けて歩いてるヤツの真意を知るべきだし、たぶん向こうはここにいるのが僕らだって知ってるだろうから、逃げても次は家にまで押しかけて来るかもしんない。


 だから、そう言ったんだけど……


 りんが「マジで!?」と驚いた。


「人の話聞いてなかった!? あたし、怖いって言いましたよね!?」


「聞いたよ聞いた、今まで聞いたことないくらい女のコっぽい声でね。まったく、普段からそんな声出せばいいのに、なんでお前っていつもそんなオトコっぽあいだぁっ!」


 ……殴られた。


「い、痛いだろ! 今、本気で殴ったでしょ!」


「うっさい! 今のはヨケーなこと言ったあんたが悪い!」


「なんだよ、本音がつい口から出ただけだろ!」


「ホンネ!? あんた今ホンネって言いましたよね! あんたあたしのこと、そんなふうに見てたの!?」


「当たり前だろ、おしとやかだったら普通、僕の部屋へズカズカ勝手に入ってきてベッドの上でポテチ食べないでしょ!」


「う……そ、それはあんたとあたしの仲だからよ!」


「ほら出た! こういうときだけ僕のこと特別扱いして……」


「がうっ」


 ……うん? 


 視線をふと落とすと、僕とりんのズボンをくいくい、と引っ張るだるまの姿が。ジトっとした目線が、見るからに僕らに対して呆れてるっぽい。そして。


「がうっ」


 と、もう1回吠えてから、僕らから視線を外す。

 その視線を僕とりんが追うと。


「……お前ら、こんなとこでよく痴話ゲンカできんな」


 肩へかついだ木刀に両肘を引っかけながら突っ立つ二年生のブレザー姿がそこにあった。……コイツもめっちゃあきれた顔してる。


「……しまった」


 『モニタリング』は解除するまで効果は続くけど、集中を切らせるとイメージが届かなくなるんだった。



もし、面白いなと思ってもらえたら、ポイント・感想・レビューをいただけると嬉しいです^_^


こんな感じのドタバタした言い合いが好きです^_^

これからも、ちょくちょくいれてくかな、と思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ