さん。
「もーっ!」
「牛か!!!」
私の友人達はいつもうるさい。騒がしい。
静かにしてほしいって思ったことは一度や二度で数え切れるものじゃないけど、まあ、好きな子達。
男の子の方は、授業中彼女の方をちらちら見て、ちらちら見ている自分自身に気づいたら顔を伏せて机をばんばんと叩くフリをするのだ。可愛い。
女の子の方も、男の子の方をちらちら見つつ、時たま空中に目をやったと思うと顔を真っ赤にして、今度は男の子をじっと見つめている。可愛い。
私といえば、後ろからその様子を眺めたり、授業を真剣に受ける気ない様子の彼彼女のためにノートをとったりで、至極普通の生活をしている。
私達三人、間に私はいらないと思うけれど、昼休みや放課後に集まってひたすら雑談している毎日。
いつものように時間を忘れてじゃれあってる二人に、昼休み終わるけどご飯食べたの?の視線を送ると、二人とも顔を真っ青にして急いで食べ始める。この食いしん坊どもめ。
このように傍観者とも言える私にも、好きな人が出来てもいいはずだと思わないか?
友達と楽しそうに喋ってる彼女の姿をチラ見してるぐらい、恋に弱かったりしている。
友人達も私の好きな人がわかっているものだから良くからかってくるけど、いい加減くっついてからそういう話はしてほしい。
にやにやするな!目を合わせるな!哀れみの視線でアイス奢るよとか言うな!!
彼女に惚れたのは自分でも単純だと思う話。
手が触れ合って、はにかまれて、ちょっと話して、最後に言われたセリフに心を奪われた。
そこらの公園でたまたまあって、何年か後に同じクラスになるなんて思ってなかったんだ。
その一瞬のこと彼女は覚えていないだろうけど、覚えてたらいいなぁっていう欲求もあって悔しい。
今日は友人達は珍しく勇気を出すようだ。
これで、やっと私の役目も終わり。これからは彼と彼女の話だなと、実感が沸いて、ほんの少し悲しくなった。
それに比べて、私は全然進まないなぁと泣き言を口の中で漏らして、放課後の机に伏せる。
「私、この街に来て、本当によかったって。泣きたくなるぐらい思ったんです。」
「全部新鮮で、きらきらして光って見えて、空気もあそこの濁った空気とは違ってて。」
「あと私が、きらきらと見ることが出来るのかわからないのが人生ってものなのでしょうか。」
そう言った眼差しはしっかりと光を持っていて。惹かれてしまう。
そして、ほんの少しの会話は唐突に終わりを告げる。
「.....あ、家族が来ました。.....」
彼女は一回俯いて、そして顔を上げて、笑顔で言う。
「また会えたら!...お元気で」
眼差しをゆっくり開けると、目の前には彼女がいた。
拗ねて寝たのに、幸せがあっちからやって来た。
私が起きたことに気づくと彼女はこう言う。
「初めまして。会いに来ました。」