にじゅうろく。
鬼はー外、福もー外!
少女が投げた豆が突如飛び出てきたナイフに突き刺さって威力を失わせる。ナイフは勢いを失って地面へと落ちた。
少女が一歩踏み出すたび、どこからか鉄球が落ちてきたり矢やナイフが飛んできたり落とし穴が作動したりするも、奇妙なことに全ての罠は少女を避けているように見える。
避けようとしてないのだ。勝手に罠がずれてしまう。
今日も毒の煙を部屋に流し込むも、屋根裏があったせいで普通に空気が抜けていく。
暗殺、できない!
僕はこの少女を暗殺するのが仕事。
毎日方法を探るも、どれを実践しても空回り。
とっくに少女には僕が仕掛けているのはバレているのにも関わらず家庭教師という立場のままだ。
普通だったら親に言って終わりのはずなのだが。
そう、親公認の暗殺である。
親どころか本人も公認してる為やめられない。
やめたい。
まだ一人目とはいえ、正攻法からいっても、家庭教師として活動してる間に行動しても、全然殺れない。
なにか殺せない天命みたいのでもあるのだろうか?
家庭教師の時間はチャンスといえばチャンスである。
毒を盛るのも、ナイフで突き刺しに行くのも、
首を絞めるのも。
それが全部たまたま零してしまったり、壁に突き刺さったり、ぬいぐるみだったりしてしまう。
不思議な力が働いてどうしようもない。
....あと、この子自体は悪くないのが一番殺しにくい。
笑顔が可愛いのだ。いや、嘘だ。すべて可愛い。
殺したくないほど、殺る気じゃなかったら惚れてしまうほど褒めちぎれる。優しい。
無意識というよりはもうはんば意識して罠が全部誤作動するように配置してる説を疑ってしまう。
...どんなにやろうとしても殺せない。そんな春だ。
...ついに、殺してしまった。
目の前には確実な少女の死体だ。
息をしてない。さっきまで苦しんでいた。助けを求める目をされた。可愛い姿は可愛いままで死に至った。
後悔に苛まれ、僕が生きてることすら不安になる。
...エイプリルフールでーす!
その看板を持って倒れていたことに気づいたのは数分後だった。




