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にじゅういち。

明るい話題はないのって、それを俺に聞かれたって困る。


口下手なのは自覚しているが、直そうにもぶきっちょになるし、必要なこと以外話せる気がしない。


愚痴を零されたって、人にはいろんな面があって全部悪いとは一概に言えないから、曖昧に肯定することしかできない。


借金しないと約束できるならお金を貸してもいいが、俺から常に借りるようになっていつか借金しまくる人生になったら嫌だから普段は貸さない。


図書室にこもってて何が楽しいのと言われても、まあ読書以外ないだろう?


人はいつの間にか近寄ってきて、離れて戻っては来ない。

来る者拒まず去るもの追わず、そんな現状だ。



生きてきて、常に疑問に追われている。


生きる意味はあるのか、人と関わる意味はあるのか、俺たちに感情なんて必要だったのか。


誰かに問われたって答えることすらできない、ずっと考えていた。


今も疑問をぶつけられて、漠然とした答えを返すことしかできない。


そんな俺が衝撃を受けたのは当然だろう。


全ての疑問を「どうでもいい」なんて言って切り捨てる人と出会ったのだから。


考えてみれば出会ってきた人の中でもばっさり言う人はいたかもしれない。


しかしあまりにも短い付き合いしか出来なかったから、新鮮だったのか。


とにかく、その心を教えてくれたのは珍しいものだった。

以降、俺は少し変わった。



探す意味もないものを探さなくなった俺は、生きていると自覚するようにいろんなものに手を出した。


彼女が勧めてくるものはなんでも見たし、見た目にも気を遣うようになった。


それは非常に面白くて、楽しい日々だ。



しかし、その日々も長くは続かなかった。


いろんなものに手を出したあまり、電子掲示板にたどり着いたのだ。


そこでは罵詈雑言が書かれていたり、馴れ合いがされていたり、時には真剣な討論を出来る場所だった。


俺は昔の俺と同じような思考をもっている奴に、彼女の受け売りで「どうでもいい」だろ?と送信した。


...掲示板ではすぐに反応が帰ってきた。


それは、ただの思考停止だ。解決になっていない。

もやもやとした思いが戻ってきてしまったようだった。



気持ちがあやふやなまま日々を無意味に過ごし、彼女からついに告白される。


頭が止まったまま、楽しい日々を送ってくれた彼女を無下にするように、ごめんとつぶやいて逃げるように帰る。



ぷちりと、縁が切れた音。


もう彼女とは一緒にいられない。


自分の思考のせいで、何も考えず彼女を傷つけ、家にこもっている。


俺の生きる意味はなんだろう。


鞄につけてたストラップが地面に落ちる。


立ち止まって拾い上げると、それは彼女とお揃いにした水族館のイルカのストラップだ。


胸に何かこみあがってきて、体が熱くなる。



思い出とはいとも容易く俺を現実へと連れ戻してくれる。


楽しかったのは、何故だ?


一つ一つピースがはまるように、ジクソーパズルが埋まっていく。


生きてて良かったって一瞬でも思ったことはなかったか?


ひとつピースが大きくなってパズルの枠組みをこえて暴れ出す。


そうだ、彼女と一緒にいたからだ。


笑ってる姿を見て、幸せに感じたのは。


携帯はもう繋がらないだろう。


彼女は俺が降った場所で泣いていた。


間に合わなくても、走れ。


俺が生きる意味は、彼女を幸せにすることだ。




「何かの間違いだよ、それ。だって私、どうでもいいわけないもん。それに悩んで唸って、暗くなってずーんってして、散々に打ちのめされて導いた答えがひとつあるの」



「みんなで、幸せになるため。そう考えたら生きるの楽しくなりそうじゃない?」

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