じゅうはち。
「君が全然俺って言わなくなった」
そ、そりゃあねぇ?
幼稚園や小学生のガキの頃はまだしも、中学やら高校になるとからかわれると思ったから。
事実として、予想より早い、小学の高学年にはもう男女なんて呼ばれてた。
大体、君が大人しくて可愛い女の子が好きって言ったんだから、そんなこと言われても困る。
「えぇっ、嫌だよ...」
ほら、ちょっとあざとく頬を赤く染めてもじもじして上目遣いで君の顔を窺う。
こういうの、好きなの知ってるんだから。
....あれ、いつもみたいに狼狽えない...
今度は私が目を回して、多分頭の上にたくさんはてなマークを出してしまってる。
らしくない真剣な顔をつくって、おどおどせず、私の目を見てる。
私は目を逸らして、理由を聞いた。
「なんで?...頑張ったのに」
間髪を入れず大きな声で君は叫ぶ。
「ギャップ萌えだ!!」
1take
「俺....お前のこと好きなんだっ...って言って」
「どーしても言わなくちゃダメ..?」
「絶対!言わなくちゃダメだ!」
「私...君のこと大好き。...これで許して?」
「ぐはっ....」
轟沈。
2take
「俺と一緒に水族館遊びに行かないかっ.....って言って」
「えー!この前遊園地行ったばかりなのにまだ遊び足りないの?」
「違う!例えだ。言うだけでいいんだ!」
「カフェオレと一緒に水族館行かないかっ!」
「飲み物と遊びに行く趣味はないぞ!...ぐぬぬ」
轟沈。
3take
「な、なら妥協しようじゃないか。“俺”じゃなくて少しがさつな喋り方になるだけでいいぞ」
「・・・」
「そんなに嫌なのか!ひ、一言でいいんだ」
「私、付き合ってられないしご飯買ってくる」
「待ってくれ、悪かった。一緒に行こう!」
轟沈。
4take
「んー、今日の晩ご飯は何がいい?」
「ナポリタン風ピーマンの肉詰め〜俺を添えて〜」
「わかったよー。ピーマンの挽肉は君を使えばいいのね。じゃあノコギリ買って」
「嘘だごめん。だから鞄からノコギリらしきもの出すのやめてくれないか」
「じゃあピーマンの肉は無しねー」
「許してくれなんでもするから」
轟沈。
5take
「俺のために毎日お味噌汁を作ってくれないか...っていt」
「君のために、毎日お味噌汁を作ります。なので、私を幸せにしてください」
「えっ...」
「して...くれないの?」
「幸せにします!離しません!!」
爆発。
君はなんで私のそういう姿を思い出させるのかなぁ。
あの頃君のこと変な風にからかっちゃったし、忘れたい思い出なのに。
「昔の君も大好きだから」
...馬鹿。
「俺...う.....やっぱり無理。私もいつの君も好き。」
もちろん君が我とか言ってた時期のことも。
「ねぇねぇ、君さ、我って言ってたよね。言ってみて!」
「嫌だ!!」




