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じゅうなな。

真夜中の恋話、怪談。


同性同士だと止まらなくてつい夜ふかしをしてしまう、そんな修学旅行。

私は話疲れていつのまにか反応がなくなった皆を見渡すと、一人だけ目をぱっちり開けてる彼女を誘って、ベランダに出る。

珍しいことに、基本的に部屋の外には出ちゃダメなんだけど、ベランダには出てもいいんだよね。

男子がベランダ乗り越えて女子の部屋の前のベランダに行こうなんて話してたけど、実際はベランダが離れてて実行できなさそう。

彼女はしっかり開いた眼で夜景を見渡す。

有名な場所だからといって夜景がきれいな訳じゃない。

夜に見たら田舎の町並みとほぼ変わらなくて、田舎と同じように月の光や星が輝いていた。


「...眠れないの?」


彼女の口はゆっくりと開いて私の問いに頷いて小さく返す。


「気になって」


同じ光の当たり具合のはずの、真横で見ていてもどこかその姿は眩しくて、羨ましいなあと心の中で呟きながら目をそむける。


「応援できないよ」


私が意地悪なんじゃないと思う。誰だって、好きな人が被ってしまったら、ライバルを応援できない。

彼女が幸せになればいいのにって思うけど、私だって幸せになりたい。

心痛んでも、しっかり伝える。

その言葉を受けた彼女は目を瞬かせて、怒ったように頬を膨らます。


「勘違いしてる。私が大好きなのは、君達」


この子は、まだ自分の恋心を自覚できてない。

傍から見る私はわかってるんだけどな。

ねぇ、気付いてないでしょう?...あなたが彼に向ける視線、私に向ける視線、他の子に向ける視線、全部違うの。


私の友達。

自分の気持ちを誤魔化し続けてる、可哀想な子。

焚きつけない方が私に有利だ。

いつか、彼女は恋していたことを知って、誰にも知られず泣いて。

自分の事じゃないしどうでもいいはず。


でも。



「嫌いなの。あなたのそういうところ」


ほら、明らかに泣きそうな顔した。顔整ってるからそれすらも綺麗でずるい。


「巫山戯ないで。私が怯えるとでも思ってるの?」


パンッ

泣きそうな顔に追い討ちをかけるようにビンタ。

今の、全力かけたから。痛いでしょ。

彼女は呆然としてて。


「私が負けたってそれはあなたの責任じゃない。逃げないでよ。私を言い訳にしないで」


段々彼女の顔は赤くなってきて、怒ったようだ。

眉をひそめて、怒ったのにそんな怖くない顔しかできないの?

震えた声でさっきよりも大きな声で私に言う。


「私が、いつ逃げたの。私は二人を見てるだけで充分なの」


ほら、やっと本音が出てきた。

充分なんて言葉、妥協なんだよ。

隣にいたいくせに。キスだって、したいくせに。


「私はあなたの遠慮するところが嫌いなの。可愛くて綺麗なのも嫌いで、そもそも私程度に怯えてるのなんてもっと嫌い」


ついに彼女の目から涙が溢れる。

私はどんな顔をしてるだろうか。怒ってる?今にも泣きそうな顔をしてる?


それ、でも。


「でも、あなたのことが大好きなの。せめて、戦って、目を合わせて、喧嘩させてよ」


目がぼやけて、ついに目の前の彼女からは堪えたような泣き声が聞こえた。

私を見くびらないで。


「あなたが舞台に上がらなかったら、私は後悔する」


だから、上がってきてよ。


「...私は、彼のことが大好き。だから、あなたとはライバルね」


彼は彼女に気が向いてて、あぁ、最も強い相手がライバルになっちゃった。馬鹿だなぁ私。

でも、頭の中にかかっていたもやもやはすっきりとれた。


「知ってる。容赦しないから」

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