じゅういち。
こたつ。
それはあったかくてぬくぬくして、冬の必需品。
そこで寝ればいつのまにか風邪引き、一度入れば中々出たくなくなる、冬である。
エアコン。
それは暑くて溶けそうになる、夏の必需品。
つけたまま寝たら風邪をひいて、一度つけたら部屋から出たくなくなる。夏である。
「こうして文にしてみると、どっちの季節の風物詩も特に変わらない気がしない?大体エアコンもこたつもあったら人をダメにする物っていうのは変わらないと思うの。冬は湯たんぽで、夏は扇風機で我慢するべきだよ。電気代も節約できるしダメ人間にもならないしそうしようよ。ってことで我が家のエアコンとこたつ売るけどいい?」
「ダメです。君の家のエアコンとこたつ無くなったら私冬耐えれません。ちゃんと残してください。」
大学生ぐらいの男女が人目に付く商店街でいちゃいちゃしあっている。活気のないここの商店街で男女が賑やかに騒いでるのは、珍しい風景だ。
ただ、如何せん女の方は長く話すし、彼氏もどうやらそれを止めようとしない。口が回る彼女にちゃんと考えてしっかり止める彼氏と言ったところだろうか。
男女の会話は、まだまだ続く。
「だから、それはこのパセリが問題であってさ。配置的に左のお皿の中心に置くのはダメだよ、見た目が悪くなっちゃう。ちょうど菊のお花の上に置くのが安定してる。葉っぱの配置ってさ、ただ並ばせるだけじゃ見栄えが良くないの。だから、ここ。」
「いやいや、ここはパセリ抜いて大葉入れれば解決するところじゃない?そう、それとって。」
さきほどとは全く違う、今度は課題の話かね。
かれこれ男女は同じところでずっと真剣に討論しているが、だんだん人が集まっていることに気付いてないのだろうか。いや、これは無視しているのか。
さて、まだ話は続く。
「へぇ、そこまで言うんだったらマジックできるんだよねぇ。君が不器用なこと知ってるんだよ、すぐ謝ったほうがいいよ。僕に叶うわけ無いじゃん。ほら、勝負。」
「残念だけど、不器用なのにマジックだけはやけにしやすくて。ほら、ロイヤルストレート。」
「...っ!?...」
大道芸みたいなこともやってきて、観客が集まっていることは意識しているのだろうか。おい、男の方袖体したの丸見えだぞ。敗けたな。
男女の会話はもう少しで幕を閉じるようだ。
「わかった...今日の晩御飯、パセリでいいよもう。」
「かちー。」
...ついに決着。パセリしか食べない宣言。何がどうなってそこに終着したのかわからないが、仲睦まじく両手をつな....両手を繋いで歩いてる....
最近の若いのはわからないものだな...




